シンデレラノーフィット

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カクテルグラスの中にはスライスレモンが浮かび、下から上へと透明の粒が弾けている。 シュワシュワと音を立てる泡が苦しい喉を刺激しそうだった。 スタンディング席に移動した私は2杯目に頼んだジンフィズを眺めながら、いつの間にか始まっていたピアノの生演奏に耳を傾けていた。 「一緒に飲まない?」 美しい音色に乗って耳に届いた甘い声に、俯いていた顔を上げる。 目の前に立つのは、スラリと背の高い男性。 久しぶりにヒールを履いている私が見上げるくらいなのだから、彼が相当長身なのは間違いない。 整った綺麗な顔。 清潔感のあるマッシュレイヤー。 照明に当たると透けるような髪色はアッシュブラックで透明感がある。 顔立ちからしてきっと日本人だと思うけれど、あまりにも日本人離れした雰囲気を放つ男性を前に、私は息を呑んだ。
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