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「育子さん。良い名前だね」
「私にお似合いの名前だと思ってるでしょ」
「うん。“子”がつく名前は綺麗な日本人女性によく似合う」
「そういうことじゃないし」
「ん?」
類という名前の男は、意味が分からないとばかりに首を傾げて再びグラスに口をつける。
私の周りにいる人達とは全然違う反応をする彼に、私は戸惑いを隠せない。
「ジンフィズのカクテル言葉、知ってる?」
「…知らない」
「あるがままに。自分を見失ったり自信を無くしたとしても、そのままの自分でいい、ってこと」
「そのままの…自分」
「俺も育子さんも、そのままの自分でいようよ」
そっと私の手を取った彼は、そのまま手の甲に唇を落とす。
ピアノが奏でるのはエリック・サティの名曲、ジュ・トゥ・ヴー。美しいクラッシックのラブソングだった。
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