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出逢ったばかりの女の手にキスするだなんて、まるで外国人だ。有り得ない。
頭ではそう思うのに重なった手が熱を帯び、ムードに流されそうになる。
淡い茶褐色の瞳は揺らぐことなく私だけを捕らえていた。
「…いつもそうやって女性を口説いてるの?」
「心外だな。これでも自分から声を掛けたのは初めてだよ」
クスッと笑う彼の表情は、どこか余裕を感じられる。女性の扱いに慣れているとしか思えない。
1ミリも逸らすことなく向けられた真っ直ぐな眼差しに狼狽え、後退りしてしまった。
それと同時に踵に走った鈍い痛み。
スニーカーに慣れすぎた足は、久しぶりに履くヒールの感覚をすっかり忘れて靴擦れを起こしていた。
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