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「どうかした?」
「ただの靴擦れ。たいしたことないよ」
さりげなく離した手が不自然に見えないようにグラスを掴む。
立ち仕事だった販売員時代、何度も経験した痛み。数日もすれば治ることを知っていた。
「ちょっと待ってて」
「え?」
スッとその場から離れた彼は、カウンターにいるマークに何かを伝えるとすぐに戻ってきた。
「お待たせ。行こっか」
「行くってどこ、に…」
言い終わる前に、ふわっと宙に浮いた私の体。彼の右手は私の膝裏に、左手は私の背中に回され、軽々と抱き上げられてしまった。
「ちょっと…何!?降ろして!」
「大丈夫。心配しないで」
細身とはいえ、やはり男性。
突然のことにパニックになった私が手足をジタバタ動かしても彼の体はビクともしない。
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