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思い起こしてみれば、幼少期から人より背が高かった私はあまり女性として扱われてこなかった気がする。
不自由に感じた事はないけれど、そういう面では不利だったのかもしれない。
背が高い女性イコール強そうというイメージでもあるのだろうか。怪我や病気をしても特に心配された記憶がない。
「立てる?」
「うん…」
床に膝ををついたまま掌を上に向ける形で目の前に差し出された手。
その振る舞いがあまりにも自然で、気付けば吸い込まれるように自身の手を重ねていた。
「カウンター席、ちょうど二つ空いたよ。あっちに移動しよう」
たったそこまでの距離をエスコートしてくれる。そんな人に今までの人生で出逢ったことがない私はどう反応すればいいのか分からない。
「It was a great help. Thanks a lot」
ソファー席を譲ってくれたカップルに英語でお礼を言う彼の発音は綺麗で、ネイティブスピーカーみたいだと思った。
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