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「あ、すっごく美味しい」
「うん。俺もこれ好きなんだ」
レモンを感じる柑橘系の風味と口に広がる苦味。はっきりアルコールを感じるのに、顔を歪ませることなく平然と飲み干してしまうのもきっと私の可愛くないところ。
「このカクテルの名前は?」
「ビトゥイーンザシーツ」
「ビトゥイーン…」
直訳すると、ベッドに入って、という意味だ。
最後の一杯。時刻は夜の12時を過ぎている。
シンデレラは帰る時間だけど、私はシンデレラになれない大女だ。
「カクテル言葉は、あなたと夜を過ごしたい」
「…っ、」
「育子さん…ダメ?」
もしも今、ここで27センチのピンヒールを落としたとしたら。
この人は必死になって私を探してくれるのだろうかーーー
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