シンデレラノーフィット

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都心にあるラグジュアリーホテルの室内は100平米以上ありそうなほど広い。 床から天井まで続く大きな一面窓から超至近距離に見えるスカイツリーはライトアップされている。 日常から解き放たれていくような感覚の中、 ギシリ… ベッドのスプリングが音を立て、ふかふかのベッドに体が沈んでいく。 二つの視線が交わる。逸らしたくても艶っぽい瞳から目を逸らすことができない。 「無理矢理は嫌なんだ。もし嫌だったら…今ならまだギリギリ止められる」 「嫌ならとっくにぶん殴ってる」 その答えが予想外だったのか、笑われてしまう。 私はYES、NOがハッキリしている人間だ。 嫌なことは嫌、間違っていることは間違ってると相手が誰であっても言える。 それは長所のようで、実際は短所なのかもしれない。 曖昧に答えた方が丸くおさまる場合もある。 白黒つけない方が相手を不快にさせずに済む場合もある。 一人の社会人として、そういう社会の仕組みみたいなものは理解しているけれど、悪くもないのに謝ったり、人の顔色を伺ってばかりで自分の思いを晒け出せなかったり。 そんな生き方みっともない。自分を見失ったらおしまいだ。 少なくとも、数時間前までの私はそう思って生きてきたはずだったのに。 出会ったばかりの男にベッドで組み敷かれている今のこの状況をどう説明するべきか。
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