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セックスにはムードが大切なのだと知った。
修一がパンツ一丁になった時は、ヨレヨレの下着とだらしなく出ている下っ腹に何度がっかりしたことか。
一度盛り下がった気持ちを立て直すのは不可能で、行為自体もおざなりだったように思う。
どいつもこいつも濡れる前に挿れるような男ばかりで痛い思いをしたこともしばしば。
だからセックスは好きになれなかった。
でも、今日はこれまでにないほど潤っている。
潤っている…けれども。
「…挿れるよ…」
「ちょ、ちょっと待って」
海外で育ったらサイズも自然とアメリカンになってしまうものなのか。なんて、しょうもないことを考えてしまうほどにはヘビー級で一瞬怖気付いてしまった。
「やっぱり…やめたくなった?」
コツン、と額と額をくっつけながら問われる。
カクテルの香りにほんのり混じる汗の匂い。
甘くて低い声、向けられた艶かしい瞳。
……何も怖いことなんてない。
返事をする代わりに小さく首を横に振った。
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