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「いやいやいや。3歳の違いは大きいって」
「私は別に何とも思わない」
「相変わらず自分を曲げない子ね」
「それはどうも」
「んっ、やっぱ社食のホットサンドうまっ!食べる?」
「いらない。パンは朝だけで充分」
お互い同期入社で販売員として経験を積んだのち本社勤務になった私達は、好みも性格も全然違う。それでも気の置けない大切な仲間だ。
「また日替わり和食プレート?よく飽きないわね」
「和食最高」
「しかも今日は育子が大好きな肉じゃが定食だしね」
「肉じゃが最高。……でも、今は肉じゃがに顔向けできない」
「え、なんで?」
「肉じゃが…私が悪かった。ごめん…」
「あら、食べ物に謝罪してる。おもしろい子」
あの日作った肉じゃがは味が良く染みてて美味しくできたのに。結局、一口も食べることなく捨ててしまった。肉じゃがに罪はない。
「ふーん。それでフラれた腹いせに若いイケメンとヤッちゃったと」
「下品な言い方するのはやめて」
「いいなぁ、独身だとそういうのも許されちゃうもんね。うらやましい」
「既婚者の余裕かますな」
ちょうど一年前、美紅は社内恋愛の末にゴールインした。
結婚式のブーケプルズでは私が当たりのリボンを引き当て、「次は育子の番だね」なんて言われて少し浮かれていたのが懐かしい。
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