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「いた…」
ルーム内の一番奥。新作のメンズ服を纏ったマネキンを眺めている男性を見つけた。
後ろ姿だけでもタッパがあるのが分かる。
「…よし」
こういうのは第一印象が大事。
他の女子社員にチヤホヤされてつけ上がっているかもしれないから、ヘラヘラせずビシッと厳しく言ってやらないと。
スゥ、と息をゆっくり吸って。
フーッと一気に吐き出した。
「コラ、新入り!アシスタントが勝手な行動してたらダメじゃない」
大きな声に少し肩を揺らしたその人は、静かに振り返る。
その瞬間、今度は私の肩が大きく揺れた。
「育子さん?」
脳がしっかり記憶している甘い声。
整った綺麗な顔。
清潔感のあるマッシュレイヤー。
ルーム内の照明に当たると透けるような髪色は、アッシュブラック…
「春瀬、くん…なんで…」
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