5025人が本棚に入れています
本棚に追加
/328ページ
この一週間、彼はこんな調子で私のそばから離れない。
気付けば美紅とも意気投合して仲良くなっちゃってるし…
「育子と春瀬って食の趣味似てるわね」
「ああ、食だけじゃなくて実はお酒の趣味も…」
「ん?酒?」
「あばばばば」
美紅には、あの夜の相手が春瀬くんだったことを話していない。
ていうか普通言えないでしょ?そんなこと。
一夜限りのつもりで関係を持った男が同じ会社、それも直属の後輩になったなんて死んでも言いたくない。
会社で変な噂が広まったら面倒だし。
それなのに余計なことを言おうとするから手のひらで口を塞いでやった。
ちなみに美紅が頼んだのは生姜焼きがメインのAランチ。こっちもなかなか美味だ。
「そうそう。前に好きなお酒の話で盛り上がっちゃって。意外と趣味が似てたんだよね?」
「ははは…ハイ。」
ベラベラ余計なこと言うんじゃねぇ!という圧が私の表情から伝わったのか、春瀬くんは両手をあげて降参のポーズをしながら苦笑いを浮かべている。
「あのね…春瀬くん」
「なんですか?」
「アシスタントなのは仕事中だけで休憩中は別行動してもいいんだよ。いや、寧ろ別行動しよう」
「え?でも、ジョージさんから常に育子先輩の近くにいて色んなことを学びなさいって指示がありました」
「ジョージ…誰?」
最初のコメントを投稿しよう!