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「育子先輩?」
仕事に対する熱い気持ちを思い出し、胸がいっぱいになる私を春瀬くんが心配そうに下から覗き込んでくる。
「あ…ごめん。なんか春瀬くんを見てたら色々思い出しちゃって」
「色々、ですか」
「私ね、この仕事が大好きなの。それを改めて再認識できたっていうか」
「俺も好きです。素敵な洋服に囲まれて働けるこの仕事は天職だと思っています」
彼の言葉に深く頷いた。
彼がファッションを愛する人間だというのは見ればすぐに分かる。
仕事っぷりにしても、日々アップデートされるファッションセンスも。
自分磨きを怠らず、自分も周りも飽きさせないファッションを追求する情熱がヒシヒシと伝わってくるのだ。
「はー…美味しい…」
疲れた体にあったかいブラックコーヒーが沁み渡る。
外は暑いけれど、社内はクーラーがガンガンに効いていて寒いくらいだからホットドリンクがちょうどいい。
「ヨシヨシ」
「…!?ゴホッ、ゲホッ…!」
味わうようにコーヒーを啜っていると、突然隣からスッと伸びてきた手に頭を撫でられた。全く意味が分からなくて思わずむせてしまう。
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