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プロローグ
上司になる人と恋はしない。
絶対に。
そう決めて、この春、私は新しい会社に転職した。
一年前、大学を卒業、ずっと入りたかった会社に入社した。けれど、配属された部署で直属の上司に執拗な執着をされていたようで、いつの間にか私と付き合っているとあらぬ噂をたてられた。
上司のことはそれまでは尊敬していたし、仕事では助けられていたから、帰りに仕事の愚痴を聞いてあげるつもりで何度かお茶したことはあったけれど、そういう関係になったことはただ一度もなかった。だからそういう目でみられていたなんてショックだったから直接上司に相談に行ったら飲みに誘われて、噂を流したのは自分だ、と言われた。そして本当にしようと平然と言ってくる上司が信じられなくなった。
社内の皆の冷やかしは続き、上司はただ人の良い笑みを浮かべるだけ。歯がゆいほどの誤解を解こうとしたけれど、誰も信じてくれなかった。次第に居づらくなって、年明けに退職願を出した。
今日は転職して初の出社日。
新しい会社で、新しい私になる。
恋愛なんてしなくていい。
会社には仕事をしに行くだけ。
そう決めた私は新しい職場の自動ドアを踏んだ。
カーペットのふかふかの感触に胸が踊る。
恋愛はいらない。これからは仕事に生きる。
目指すは一人でも楽しく生きられるバリキャリ!
なんて思っていたのに……
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