664人が本棚に入れています
本棚に追加
/169ページ
「第一営業部って、最上階なの?」
「ああ、黒須課長、今、社長の雑務も兼務してて」
「社長?どういうこと?」
「あの人、社長の次男坊なんだよ。社長が体調崩して入院中でさ、長男の副社長と社長の職務を分担して手伝うことになったんだ」
家族経営のベンチャー企業だとは聞いていたけれど、社長がそんな大変な事になっていたなんて知らなかった。
面接の時のやり取りを不意に思い出した。
少し威圧感のあるまなざしの初老の男性で、
私の話を静かに聞いていたのを思い出す。
「しっかし、黒須課長もすげえよ。
いくら兼務するからって重役フロアの隣に
部署ごと引っ越させるとはさ、仕事熱心過ぎて
逆に怖いよ」
「…なんか大変そう」
「いや、第一の女子社員達はどの部より幸せそうだけど。寧ろ進んで残業したがるらしいぞ」
「え、何で?」
「じきにわかるよ」
そう言ってにやりと笑む瞠を不思議そうに見上げていたら、エレベーターの扉が開いた。
最初のコメントを投稿しよう!