第一章 新しい上司

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「第一営業部って、最上階なの?」 「ああ、黒須課長、今、社長の雑務も兼務してて」 「社長?どういうこと?」 「あの人、社長の次男坊なんだよ。社長が体調崩して入院中でさ、長男の副社長と社長の職務を分担して手伝うことになったんだ」 家族経営のベンチャー企業だとは聞いていたけれど、社長がそんな大変な事になっていたなんて知らなかった。 面接の時のやり取りを不意に思い出した。 少し威圧感のあるまなざしの初老の男性で、 私の話を静かに聞いていたのを思い出す。 「しっかし、黒須課長もすげえよ。  いくら兼務するからって重役フロアの隣に  部署ごと引っ越させるとはさ、仕事熱心過ぎて  逆に怖いよ」 「…なんか大変そう」 「いや、第一の女子社員達はどの部より幸せそうだけど。寧ろ進んで残業したがるらしいぞ」 「え、何で?」 「じきにわかるよ」 そう言ってにやりと笑む瞠を不思議そうに見上げていたら、エレベーターの扉が開いた。
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