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学生時代、あだ名をつけられたことがない。
大宮真は、いつも「おおみや」か「おおみやくん」と呼ばれていた。
なので、この事務所に入って、始めて聖那から「まこと」と呼ばれた時、ドキンと胸がなった。
「真、お前あの衣装返しちゃったのかよ?俺、欲しかったのに」
「あー、すいません!すぐに問い合わせします」
「もういいよ、ほんと、使えねー奴」
「申し訳ございません」
「まこと」と呼ばれたあと必ず文句を言われるのが判っているのに、やっぱり呼ばれると嬉しかった。
学生時代もたまにクラスの中心のような男子に命令され、パンを買いに走ったりしていた。
けれど嬉々として命令に従うのが、逆に気味悪いと言われ、あまり構ってもらえなくなってしまった。
聖那は、本当に性に奔放で、社長の青山から、新人アイドルの女の子まで、事務所のほとんどの人間と性的関係をもっていた。
それが、何故か真にだけは、手を出してこなかった。
「真には、欲情しねえ」と言うのが彼の口癖で、真は元々、異性愛者だったので、ホッとしている反面、なんだか寂しくもあった。
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