結婚とは?

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「結婚したら、このお城も財産も、全て私のモノになるのね」と、思ったのも今は昔。お妃様は眼下に広がるピンク色の雲を眺めながら溜息を吐きました。  地上より遠い雲の上で。こんな孤独を感じる事になるとは、お妃様は思ってもみなかったのです。  お妃様と王様が結婚した時、それはそれは盛大な式が行われました。他国からも来賓が集まるなか、国中から祝われてお妃様は天にも昇る気持ちでいたのです。  いま考えてみれば、実際しごく当たり前のことなのですが、その時は気付きませんでした。雲を登りながら考えたのは未来の幸せばかり。どんな苦労が待っているのかを、お妃様が真剣に考えることはありませんでした。  登ってみれば雲の上にあったのは孤独です。王様であるパートナーは国を統べる仕事があります。国中を飛び回ったり、外国との交渉に赴いたりと大忙しです。一方、お妃様は、やる事がありません。出来ることがありません。政治に携わることは、女性にとってはタブーだったからです。  雲の上ですから、両親や友人を頻繁に招くこともできません。お妃様のほうが出掛けるという方法もありますが、王様がいないのに城をあけるというのもはばかられます。お妃様は広い広い城の中で一人、過ごすしかありませんでした。  気付けば、お妃様は何一つ手にしてはおりませんでした。結婚したことで、お妃様が国のモノになったのです。  孤独に住まう雲の上。王様が忙しく働いていれば、子作りもままなりません。お妃様はピンク色の雲の上で溜息を吐くよりほかはありませんでした。
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