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恋の始まりは突然で。それには形がなくて。
ただ夢を見たという曖昧な記憶と、好きだと思う気持ちだけに満たされていた。
一欠片も覚えていない夢。それでも、その夢がきっかけで彼女を好きになっていた。でも、いつも一緒に遊んでいた幼馴染みの妹に向けられたその想いは、高校生活と一緒に記憶のアルバムにしまってしまった。
不思議なもので、社会人になると地元なのに友達とすれ違う事もなくなった。生活リズムが学生とはこんなにも違うものなのかと実感した。それぞれが自分の人生を生きている。もう交わることもないのかもしれないと思った。
厄年とかいう歳に虫歯になった。人生初めての虫歯だった。トラウマもないので、ワクワクしながら地元の歯医者へと向かった。
平日で予定もなかったから、のんびりと一人待合室で小説を読んでいた。治療を終えた人が出てきた気配がした。
「ケンケン!」
顔を上げると、少し焦げた髪に小麦色の肌をした可愛らしい女子が立っていた。幼馴染みの妹だった。
言葉を交わそうと立ち上がると、彼女は受付に、僕は治療室に呼ばれた。「またね」とお互い苦笑いで手を振った。
診察を終えて受付にゆくと、連絡先の書かれたメモが預けられていた。彼女が残していったメモ。それが彼女と僕の人生が、再び交わるきっかけだった。
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