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 同棲を口にしたのと同じくらい、軽くて脈略なく聞こえただろう。それでも君は「うん」と言ってくれた。残りの人生、一生の大半を俺と一緒に生きるという選択に、君は間をあける事もなく答えてくれた。  それからの一年間は非日常的な日々だった。他者をも巻き込んだ結婚式と言うイベントは避けようがなく、それはまた自分の意思を形にする大事なケジメでもあった。  パートナーの為に式を挙げると言う男がいるが、もう現実から逃げているのかと思っていた。だから俺は結婚を口にした時から覚悟を決めていた。妻のため、子供のため。家族を築き、残りの人生をその為に生きて死ぬだけだと。諦めなんかじゃなかった。守りたい者がいる。それは生きる目標と糧が出来たんだと強くなった気さえしていた。  引っ越しの片付けも終わり、新婚生活は甘みも残さぬままに落ち着いてしまった。覚悟なんてものは何処へやら、一人暮らしから実家暮らしに戻ったような有り様だった。  正社員を辞めて5時間勤務をしながら家事をこなしてくれる、母親のような君が居ることが普通になって。君には俺と言う子供が出来て。結局、君の生活だけが大きく変わってしまったんだ。  二人で静かに暮らす中で、ふと幸せを感じた時。君は幸せなんだろうかと考えた。俺にとっての日常は、君にとっては非日常でしかないのかもしれない。そんなものが続くわけがないと不安を覚えながらも、その不安に不満のない日々が蓋をしてしまっていた。  そんなある日の事だった。君が倒れてしまったのは。
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