無窮

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「それはどういうことです。今更変更何て出来ませんよ、あなたが今夜にしようと誘ったのではありませんか」  警備員は怯えています。私も恐い、でもやらなければならない。家内と縁を切り第二の人生を歩みたい。家内の看護で一生終わるのは絶えられません。仕事は一瞬です。橋から突き落とし、両岸で家内が岸に上がれないよう物干し竿で突っついて50メートル川の流れに任せ、滝に落ちればもう沼です。 「あの子がどうしたのか心配です」 「あの子とは昨夜の少年ですか?」 「ええ、今日、この学校の沿革を読みました。2年8組は昭和40年まであったクラスで特殊学級です。一年生から三年生の障害のある子供等をまとめて教育していた教室です。当時木造の校舎で、渡り廊下で繋がる2年8組の離れ教室が台風の土砂災害で押し潰されました。そして平成に入り校舎を鉄筋コンクリートに建て直しました」 「昭和40年て、50年以上も前の話じゃないですか、その少年がそのまま生きているわけがありませんよ。彼はふざけて脅したんですよ。ほら学校の怪談みたいにね」 「その木造離れ校舎はどこに立っていたか教えましょうか」  警備員はもったいぶって私に言いました。 「何処です?」 「沼の上です。沼の上に2年8組の離れ校舎は立っていたんです。これ見ますか、当時の写真です」  警備員が広げる写真を覗きました。 「この子」  指差す先に昨夜の少年が笑って立っていました。 「似てるだけじゃないか、そんなことがあるわけがない、それでこの子達はどうなったのかね」 「土砂で生徒18名が犠牲になりました、そうです生徒全員です。そして教師が一人行方不明のまま捜索は打ち切られたそうです」  その教師の写真を見て驚きました。  
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