決意

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決意

 僕は毎日、下校時間直前の十分ほど玄関で相内先生と話すようになった。相内先生は翌日の授業準備で帰りが遅くなる。僕は時間を合わせるために、無気力ではあるが居残り勉強をするようになった。  友人や他の教師はほぼ帰った後なので、邪魔も入らず二人だけの空間をつくることができた。くだらない話で大盛り上がりすることもあり、至福に包まれていた。  相内先生と仲良くなって三ヶ月ほど経ち、僕は告白の決意を固めた。築き上げてきた関係があっという間に崩壊する可能性はある。浜辺でつくった砂の城が、波に飲み込まれてしまうみたいに。しかし、行動を起こさないと新しい関係も築けない。  僕はいつも通り帰る支度をし、玄関に向かった。相内先生もちょうど向こうから歩いてくる。心地よい足音が廊下に響いている。僕は両手で拳を強く握り、そして開いた。
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