背徳のオメガ 3

21/44
前へ
/44ページ
次へ
そばにいられなかったって、僕の思いが迷惑だったからじゃないの? 「お前は俺の中に潜む醜い悪魔を知らないんだ」 絞り出すように言った兄の言葉は、僕には分からなかった。 悪魔? 「小さい頃からお前をかわいいと思っていた。俺を無条件で信頼し、頼ってくるお前をとてもかわいいと思っていたんだ。誰にも触らせたくないくらいに」 まるで懺悔をするように、兄は両肘をテーブルについてその手に額を乗せた。 「俺の中の劣情は日に日に大きくなり、いつしか幼いお前をこの手で汚してしまいたくなった。俺はそんな自分が怖かったんた。お前はまだ幼く何も知らない無垢な存在なのに、そのお前をこの手で散らそうとしている悪魔が、俺の中に存在する。まだ辛うじて弟だと思うことで、その悪魔を抑えていたけど、あの夜はどうしても抑えることが出来なかった」 兄の言っていることはあまりにも僕の想像を超えていてよく理解できない。 「両親が法事でいなかったあの夜、俺とお前しかいなかったあの家で、俺の中の悪魔が暴走しそうになったんだ。俺の理性が負け、悪魔が俺を支配したら・・・。俺は怖くなって、夜だと言うのに当時の恋人を家に呼んだ。本当はお前から離れたかったけど、幼いお前を一人家に残すことも出来なくて、代わりに恋人を呼んだんだ。恋人といってもほとんどお前の身代わりで、お前への思いが爆発しないように代わりに発散させてくれる存在だった」 あの夜とは、僕が初めて発情した夜だ。 「お前への思いを誤魔化すために恋人を激しく抱いていた俺は、微かに香る香りに気がついた。その香りは俺の身体を煽り、より欲情させた。その時はその香りは俺が今組み敷いてるオメガの恋人から出ているものだと思ったんだ。だけど・・・」 あの夜のことは今でもはっきりと覚えている。 自分の身体に起きた変化。そして恐怖。 「あの香りがお前のものだと分かるのに、そう時間はかからなかった。俺がお前への思いを自らで発散している時、その香りはかすかに漂ってきたから。それは決まって、俺が自分でしているときだ。俺がお前を思いながらしているといつも香ってきたその香りが、ベータの両親からな訳がない。だとしたら・・・」
/44ページ

最初のコメントを投稿しよう!

376人が本棚に入れています
本棚に追加