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待って・・・今なんて?
僕を思って一人でしてる?
「俺を煽るあの香りはお前から出ていたんだ。その時初めて分かった。お前がオメガだって。お前はオメガで、お前からフェロモンが出ていたんだ。でも早すぎるだろ?いくらオメガだったとして、まだ幼いお前からフェロモンが出るなんてありえない。第二性の兆候が現れるのは早くても高学年だ。なのにまだ低学年のお前からフェロモンが出るなんて・・・。だけど、俺がしているといつも決まってあの香りが漂ってくる。つまり、お前は俺のフェロモンにあてられていたんだ」
確かに、僕の身体がおかしくなったのは兄の香りを嗅いだ時だ。だけど、兄の香りはいつもしていて、香りを嗅いだだけだったら僕はいつもおかしくなっているはずだ。
じゃあ僕がおかしくなっていたのは、兄が一人で・・・。
「俺は自分の中の悪魔を抑えられていると思っていた。お前の代わりを抱き、それが出来ない家では自分で発散させ、お前に向く衝動を抑えていると・・・。でも違った。俺の中の悪魔は俺の知らないところでお前を煽り、発情させようとしていたんだ。微かに香る香りでも欲情するのに、もしお前が本当に発情してしまったら。これまでと比べものにならないほどのフェロモンを出されてしまったら、俺はきっと我を忘れてお前を襲うだろう」
兄が僕を襲う。
それは僕がオメガだから?
アルファはオメガのフェロモンに逆らえないから?
「違う。俺がお前を好きだからだ。幼い頃から、俺はいつしかそういう意味で、結・・・お前が好きだったんだ」
好き?
兄が僕を・・・?
両思いだったの?僕達・・・じゃあなんで・・・。
「なんで僕の前からいなくなったの?」
僕の目から再び涙がこぼれた。
「勘違いだからだよ。俺が何を思っているか知らないお前は、俺のフェロモンでおかしくなる自分は俺のことが好きだからだと思ったのだろう。だけど本当は俺が無意識にそう仕向けていただけなんだ」
兄の言葉に、僕は無意識に叫んでいた。
「勘違いじゃない!」
勘違いだったら、こんなに胸が痛くなったりしない。兄がいなくなっても、この痛みは消えなかった。痛くて、苦しくて、僕は・・・。
「・・・だとしても、あの時の俺はそう思っていたんだ。お前の思いが痛いほど伝わってきたよ。俺もこのまま思いを告げて、お前と結ばれてしまおうかとも思った。もうすぐ第二性のことを学ぶだろう。そうしたら俺たちが本当の兄弟じゃないことに気づく。俺たちは決して結ばれてはならない関係じゃないと分かるんだ」
そうだったら、僕はどれだけ幸せだっただろう。
あの頃僕はどん底にいた。
自分の身体の変化に怯え、兄への許されない思いに苦しんでいた。
もし兄も僕を好きだと言ってくれていたら、そして、その腕で抱いてくれていたら、僕は・・・。
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