背徳のオメガ 3

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あれ?神津さんに電話?さっきそこにいたのに・・・。 そう思って部屋を見ると神津さんの姿はなく、僕が開けたままのドアも閉まっていた。 「僕の今日のスケジュールだが、全てキャンセルに」 ぼうっと部屋を見ていた僕は、聞こえたアダムの声に思わず彼を見た。 「ダメですよ。勝手に休んじゃ」 急に口を出した僕にアダムが驚いた顔をする。 「神津さん、今のキャンセルはなしです。予定通りでお願いします」 するとアダムが少し不満げな顔をするから、思わず僕はいつも瑛翔を叱る口調で言ってしまった。 「アダムのオンとオフの切り替えの見事さに僕はいつも尊敬してたのに、勝手にオンをオフにしてはダメですよ。今はオンの時間です。ちゃんと仕事をしてください」 僕がびしっと言うと、アダムはなんとも情けない顔をした。それがなんだかかわいい。 「でも僕は、今日仕事が出来そうにないので帰ります。休暇明けは明日からでお願いします」 なんだか頭がふわふわする。アダムの香りが濃いままだから。 オメガってアルファのフェロモンでも酔えるんだ。 「アダム、瑛翔のお迎え今日もお願いしていいですか?」 今連れ帰るにはまだ早い時間だ。でも朝心配かけちゃったから、不安がってるかな? 「分かった。エイトはちゃんと連れて帰るから、ユイトはもう帰りなさい。出来れば今日は僕の家で待っていて欲しい。・・・ワタル、聞いていたね。今からユイトを帰すから僕の家まで送って行ってくれ」 すると電話の向こうから神津さんの返事が聞こえた。 あれ?まだ電話繋がっていたんだ。 ぼやっとそんなことを考えていたら、ノックとともに神津さんが入ってきた。それを見て、僕はアダムの言葉を思い出した。 「僕、タクシーで帰りますよ?」 わざわざ神津さんに送ってもらわなくても大丈夫。それにいくら秘書でも私用で送らせるなんて、そんなの職権乱用だ。 「ダメだ。ワタルに送ってもらいなさい」 いささか強く言うアダムに、ちょっと膨れる。 すると黙って見ていた神津さんが口を開いた。 「私も社長の言う通りだと思います。これからお昼休憩ですし、休憩時間に体調を崩した同僚を家まで送ることはおかしなことではありません」 神津さんまでそう言うのなら、そうしてもらおうかな・・・。 「あ、その前に託児所に寄ってもらえますか?瑛翔が不安がってるかも」 朝あんな別れ方したから少し気になる。なのにアダムは難しい顔をして首を横に振った。 「今のユイトの顔を見た方が不安になるから、今日はこのまま帰りなさい。エイトなら朝ちゃんと僕から言ったから大丈夫だよ」 「でも・・・」 「いいからユイトは今すぐ帰って、大人しく家で僕たちの帰りを待っていなさい。ワタル、ユイトを頼む。ちゃんと家に入るまで見届けるように」 そう言うとアダムは僕をデスクから下ろし、神津さんに僕を託した。 「なるべく顔を見られないように」 顔? どうして? そう思っていると、 「では失礼します」 と言って神津さんが僕の肩と腰に腕を回し、まるで酔っぱらいを介抱するかのように僕を支える。 ?? 僕歩けますよ? そう言おうと思ったら、神津さんはそのままアダムに一礼すると僕を支えて社長室を出て、秘書室も出た。
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