背徳のオメガ 3

33/44

359人が本棚に入れています
本棚に追加
/44ページ
訳が分からないままそのままエレベーターで地下駐車場に行くと、アダム専用の社用車に乗せられる。 「シートベルトしてくださいね」 乗せられたのはいつもアダムが乗っている席。 助手席で良いのに・・・。 そう思いながらも言われた通りシートベルトをすると、車が発進した。 さすが社長の車。シートが柔らかくて乗り心地がいい。 頭のふわふわとシートの柔らかさ、それに神津さんの運転の静かさで僕はいつの間にか寝てしまっていた。 アダムの家までそんなに距離はないはずなのに、僕はすっかり寝てしまい、気がつくと身体がふわふわ浮いていた。 一瞬アダムかと思ったけど甘い香りがしない。その代わり爽やかなコロンの香りが鼻をくすぐる。 ああ、神津さんか・・・。 そう思ったけど、目が開かない。 どうしたんだろう。眠くて眠くてしょうがない。 僕の意識はそのまま再び奥底に沈んで行った。 どれくらい経ったのだろう。ふわふわと上がる意識の中で、パタパタという足音が聞こえる。その後ろに落ち着いた足音。 瑛翔とアダムだ。 夢と現実の狭間でそんなことを思っていると、瑛翔の声が聞こえる。 「あれ?ゆいくんいない」 すると、またパタパタ聞こえてガチャっとドアを開ける音がする。そしてまたパタパタ、ガチャ。パタパタ、ガチャ。 瑛翔が僕を探ている。 あれ?でも僕は今どこにいるんだろう?車に乗ったところまでは覚えてるのに、そこから先が分からない。 でもここ、アダムの香りがすごくして落ち着く。 僕は無意識にかけてある上掛けを抱き込み、その中に顔を埋める。 すると、落ち着いた足音が近づいてきてドアが開いた音がする。 「エイト」 アダムが瑛翔を呼ぶとパタパタと走る音が近づいて来て、ぱふっと寝ている僕に抱きついてきた。さすがにこれには目を開ける。 「おはよう、瑛翔」 にこにこ笑顔の瑛翔。 「違うよ、ゆいくん。えいと、今帰ってきたの」 ああ、そうか。 「おかえり、瑛翔」 すると瑛翔はにぱっと笑って、僕の頬にキスをした。 「たたいま!ゆいくん」 僕は起き上がってちゃんと瑛翔を抱きしめると、その後ろにいたアダムにも片腕を広げた。 「おかえりなさい、アダム」 そう言うと、アダムは微笑んで瑛翔ごとハグしてくれた。 「たたいま、ユイト」 アダムの香り、やっぱり本人からの方がいい。 そう思ってふと気がついた。 あれ?二人が帰ってきたということは・・・。 窓の外はすっかり暗かった。 僕ずっと寝てた? でも帰ってきたのお昼だよね? 「ごめん。僕、ごはんの用意してない・・・」 お腹空かして帰ってきたのに、食べるもの何も用意してなかった・・・。 「ゆいくん、ずっと寝てたの?」 きょとんとそう言う瑛翔の横で、アダムは苦笑い。 「じゃあ今日は何か頼もうか?」 そう提案するアダムに瑛翔の顔が輝く。 「ピザ!えいと、ピザがいい!」 目をきらきらさせてそう言われれば、ピザになっちゃうよね。 アダムは早速ピザのデリバリーを頼み、今夜の夕食はピザになりました。 それにしても僕、どんだけ寝ていたのやら。 確かに今日は兄に会っていろいろ話したから、精神的にも疲れたし、知らなかったことをたくさん聞いて頭も疲れたけれど、それでも寝すぎだよね。
/44ページ

最初のコメントを投稿しよう!

359人が本棚に入れています
本棚に追加