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発情期明け、というのもあるのかな?あんまり食べてなかったし・・・。
とにかくずっと寝ていたおかげで頭の中がすっきりしたみたい。人は寝てる間に記憶の整理をするって言うから、僕の頭もいい感じに片付いたのかも。
ピザにはしゃいだ瑛翔がリビングに行くと、僕もベッドから降りた。ここ、アダムの寝室だ。どうりでアダムの香りがいっぱいな訳だ。
「ユイト?」
ベッドから降りたもののそこから動かない僕に心配して、アダムが声をかける。
アダムの香り、戻ってる。いつもの落ち着く香りだ。
僕はそんなアダムに抱きつく。
僕ってげんきんだ。
兄とのことに決着がついて、兄に対する身体の変化の原因が分かったら、途端に心がアダムでいっぱいになってしまった。
それにさっきのキス・・・。
どうしよう。
発情期は終わったのに、どきどきしてきた。
するとアダムが急に僕から離れた。
一瞬『避けられた』と、良くない考えが頭をよぎったけれど、その時見たアダムの顔がなんとも困ったように赤らんでいて・・・。
「・・・そんな顔で誘わないで欲しい。抑えられなくなる。それとも、ユイトは僕の自制心を試しているのかい?」
僕と目を合わせず、さらに赤くなって言うアダムの言葉が分からなかったのだけど・・・。
誘う?
そう思った瞬間、僕の顔も一気に熱くなった。
後ろにベッド。
抱きつく。
どきどき・・・。
誘ってる?
いま僕誘ってたの?
いやいや、無意識だから・・・!
僕は頭をぶんぶん横に振ると、その頭を両手で押さえられた。
「続きはエイトが寝てから」
そして頭にちゅっと小さくキスを落とすと、アダムは艶やかに笑った。その瞬間に吹き出る香りはまた濃くて・・・。
「アダム・・・その香り・・・だめ・・・」
出すのやめて・・・お願いだから・・・。
「香り?それならユイトの香りも・・・。今日君が抱きついてきてからの香りはいつもと違って僕を煽ってくる・・・」
僕の香り?
僕の香りもおかしいの?
どきどきがさらに大きくなって、せっかく身体を離したのにまたくっついて・・・。
と、その時・・・。
「ゆいくん、アダムと仲良くするのはあと!ピザ来ちゃう」
突然瑛翔が寝室に戻ってきて叫んだ。
僕達はその突然の瑛翔に咄嗟に身体を離すと、誤魔化すように笑った。
「そうだね。ピザ来るね」
僕はそう言って、瑛翔と一緒にリビングに行くと、アダムも困ったように笑いながらついてきた。
それから程なくして届いたピザを三人で囲んで夕食を摂ると、デザートのプリンを頬張る瑛翔に話しかけた。
「ねえ、瑛翔。前にお父さんのことを話したことを覚えてる?」
瑛翔は口に入れたスプーンを出すと一つ頷いた。
「あの時、瑛翔のお父さんは僕が一番好きな人だって言ったよね?瑛翔のお父さんが一番好きだから、瑛翔には新しいお父さんは出来ない、て」
子供なりに真剣な話をされていると思った瑛翔は、スプーンを置いて食べるのをやめた。そしてまた頷く。
「その事なんだけど、変えてもいいかな?」
僕のその言葉に、瑛翔がびっくりしたように目を見開いた。
子供にとってはショックかな。自分の父親が一番好きな人ではなくなるなんて・・・。やっぱり、本当のお父さんが一番でいて欲しいよね。そう思いながらも、僕は続きを話し始めた。
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