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「あのね。一番好きな人、変えてもいいかな?瑛翔の本当のお父・・・」
さんじゃなくて・・・、と続けようとした僕の言葉に被さるように、瑛翔が叫んだ。
「アダム?!アダムが一番?アダムが僕のお父さんになるの?!」
アダムの名を連呼する瑛翔の目はこれ以上ないくらい期待に満ちてキラキラししている。
僕はびっくりしすぎて、ちょっとぽかんとしてしまった。
あれ?ショックじゃないの?
僕が答えないので、瑛翔は相手をアダムに変えてキラキラのおめめで詰め寄っている。
「アダムがお父さんになるの?えいとのお父さん?ねえねえ、アダムがなるの?」
もうプリンそっちのけでアダムの膝に乗っかってはしゃぐ瑛翔に、たとえ違うとしても言える雰囲気ではなかった。
いや、違わないんだけど・・・。
そんな瑛翔に困り顔になりながら、それでも瑛翔が落ちないように身体を支えているアダムからはものすごくうれしそうな空気が溢れ出ている。
なんだかすっかり、本当の親子みたい・・・。
僕もうれしくなって横から二人に抱きついた。
「そうだよ。アダムがお父さんになるの。瑛翔はそれでもいい?」
「うん!アダムがいい!じゃあ、ゆいくんはアダムと結婚するの?!」
その言葉に、僕はどきっとした。
結婚?
番にして、とは言ったけど、結婚は考えてなかった。
番と結婚は違うよね・・・?
あれ?同じ?
んん?
僕のこれまでの人生の中に『結婚』という文字がなかったので、いまいちよく分からない。アダムと会わなかったら、これからも縁のないものだったと思うし・・・。
結婚の意味がよく分からなくて考え出した僕をやんわり離して、瑛翔を下に下ろすと、突然アダムが僕の前で片膝をついた。
そしてどこから出したのか小箱を両手に持つと、僕の前に差し出す。
「ユイト、僕と結婚してください」
まるでよく見る映画のワンシーンのようにパカッと箱を開けると、そこにはペアリングが入っていた。
僕はあまりに突然の出来事に口がぽかんと開き、『アメリカ人て本当にプロポーズの時片膝つくんだ』と、関係ないことを考えてしまった。だけど、それを隣で見ていた瑛翔は興奮して僕の腕を掴んだ。
「ゆいくん、お返事は?!」
その声に我に返った僕は何故かその場に正座して、三つ指をついてしまった。
「よ・・・よろしくお願いします」
片や片膝ついて指輪を差しだすアメリカ人、片や正座して三つ指をつく日本人・・・。
そしてその横でキラキラした目で二人を見つめる5歳児・・・。
なんだろう・・・この構図・・・。
焦って咄嗟にしちゃったけど、僕ちょっと恥ずかしくない?なんで三つ指?
思わず下げた顔が恥ずかしくて上げられない。
するとアダムが今度は両膝を着くと、同じように正座した。そして僕の左手を取ると、そっと指輪をはめる。
僕の指にはまった銀色の指輪はサイズがぴったりだった。その指輪を見て、僕の胸が熱くなる。
この指に指輪をはめる日が来るなんて・・・。
そんなこと想像もしていなかった。
僕の世界は真っ暗で、瑛翔という唯一の光だけが腕のなかにあったのに、いつの間にかその世界は光輝くものになっていた。
アダムが僕の世界を照らしてくれた。
横にいた瑛翔が僕の首に抱きついた。
「これはうれしいのだからいいよ。うれしいのだったらいっぱいいいよ」
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