背徳のオメガ 3

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えっと・・・僕どうしたらいいの? 押し返すのも変だし、背中に手を回すのもなんか恥ずかしい・・・。 頭の中がぐるぐるして、手も置き場がなくて、なのにアダムは止まらなくて。それに香りが・・・。 さっきからアダムの香りがものすごく濃くて、いつもより官能的な甘い香りに実は僕の身体はすでにぐずぐずになっている。 だけど、どんどん事を進めるアダムに僕はだんだん怖くなってきて・・・。 いつの間にかシーツをぎゅっと握りしめていた僕の手にアダムの手が重なった。 「ユイト・・・やはり今日はやめようか・・・?」 震える僕から身体を離し、アダムが心配そうに僕を見下ろしている。 アダムにそんな顔をさせてしまうなんて・・・。 「ごめん・・・なさい・・・。僕初めてで、どうしたらいいか・・・」 自分が情けなくて不甲斐なくて、涙があふれてくる。 アダムといたいのに、触れていたいのに、全然上手くいかない。 だけど、アダムは驚いたようにじっと僕を見る。 「初めて・・・?」 だから上手く出来なくてごめんなさい。 僕が頷くとアダムは目元を赤くして、さっきよりももっと濃い香りを放った。 「でもエイトは・・・?」 確かに瑛翔を生んだけど。 「あれは僕も兄も誘発剤を使っちゃったし、こういうのとは違かったから・・・」 僕は恥ずかしくなって思わず手で顔を隠した。なのにその手を取られて顔を見られる。 「キスは?」 「さっき初めてって・・・言った」 もう見ないで。 「ここを触れられたことは?」 ここ・・・胸? 「ないです」 「じゃあ、ここは?」 そう言って触れてきたのは僕の下肢・・・。 僕の顔にさらに血が上って、恥ずかしさのあまり大きな声が出てしまった。 「だから何もかも初めてです!兄はただ挿れて出しただけ!どこもそんな風に触れてません。ただ種付けされただけです!」 僕は一体何を言ってるんだろう? なんでこんなこと言わなきゃいけなくなったの? もう恥ずかしくて恥ずかしくて我慢できなくて、僕はアダムの下から出ようと身を捩った。なのにその瞬間上にいたアダムが倒れ込むように僕に覆いかぶさり、僕をがっしり抱きしめた。 「・・・なんてことだ・・・神よ」 神よ、て・・・今アダム、神様に何か謝ったの?僕の痴態は神様に許しを乞うレベルなの? オメガなのに、こんな年まで未経験なのはやっぱり恥ずかしいことなの? 「・・・ごめんなさい」 何が何だかわからなくて、だけど多分僕が悪いんだろうと思わず口に出た謝罪を、アダムは全く聞いていなかった。 「あぁ、神よ。このような奇跡をもたらしてくださったことに感謝します。このような素晴らしい伴侶を、まさか清いまま私の前に現せてくださるなんて!」 僕をぎゅうっと苦しいくらい抱きしめ、アダムは何かをぶつぶつ言っている。 でもひとつだけ・・・。 「アダム、僕は清くないよ?」 だって瑛翔を生んでるんだから。その工程は踏んでる。 「いや、発情期中のアクシデントはノーカウントだ」 発情期中だったけど、アクシデントだった訳では・・・。 と思ったけど、あまりのアダムの真剣さにそれ以上何もいえなかった。
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