背徳のオメガ 3

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6年振りの日本は雨だった。 確かに梅雨の時期。雨でもおかしくは無いのだけど、こうもどんよりとした空に雨が降っていると、僕はやっぱりこの国に歓迎されてないのではないかと思ってしまう。 ただでさえ気分が重い帰国。余計に気が滅入ってしまう。けれどそんな素振りを見せると瑛翔が心配するので、頑張って笑顔を作る。 飛行機を降りるやいなや、瑛翔は好奇心いっぱいの顔をして周りをキョロキョロ見回している。初めての日本。見るもの全てが珍しいのだろう。 色々見せてあげたいのだけど、とりあえず今夜泊まるホテルにチェックインして荷物を置こう。新居に入るのは飛行機の遅れも考慮して明日にしてあるのだ。今日はホテルに一泊して、明日ネットで契約した不動産屋に行って鍵をもらう。 「ゆいくん、みんな髪が黒いよ」 空港を出ると外国人の数も減り、日本人ばかりになった。すると瑛翔が不思議そうに言う。 そうだね。 アメリカは多民族の国だからね。 「日本はね、同じ民族しか住んでないんだよ」 「みんぞく?」 「同じ国の人だよ。日本はほとんど黒い髪で黒い目の人が住んでるんだ。瑛翔も僕も日本人だから、髪も目も黒いでしょ」 その言葉にくるりと振り向いて僕を見た。 「僕日本人?ゆいくんも?」 その言葉に僕はきょとんとなった。 そういえば、自分の国の話を瑛翔にしたことがなかった。 僕にとっては当たり前だし、アメリカって本当に色々な国の人がいるから、自分の国のことなんてすっかり忘れてた。 僕はあわてて、もう一度瑛翔に言った。 「僕も瑛翔も日本人。だから言葉も僕達がおうちで話す言葉でしょ?」 と言いながら、実は今は英語で話をしている。何も考えず英語を話してたけど、ここ日本じゃん。僕も日本語を話すべきだった。 今までのルールで、家にいる時は日本語を話し、外にいる時は英語を話すことになっていたのだけど、それが身についているせいか外にいる今は普通に英語を話していた。どおりで周りがちらちら見るわけだ。 今から日本語にするのも変なので、とりあえず今日はこのまま英語で話すことにした。 どこからどう見ても日本人の親子が英語話してたら、そりゃ周りも見るよね・・・。 瑛翔といえば、日本人だったことに驚いていたものの、そんなことはもうすっかり忘れて外の景色に夢中だ。小さな子供なんてそんなものだけど、落ち着いたらちゃんと説明してあげなければならない。そんなことを思っていると、泊まるホテルに着いた。そこでチェックインするものの、なんだろう。久しぶりの日本人に緊張してしまう。 日本人に緊張するって・・・。 そう思っても、なんとなく英語で対応してしまった。まあ、部屋もアメリカからとったし、瑛翔もバリバリネイティブ英語を話してるから、日本語が話せない日本人ということで・・・。 なぜか変に自分に言い訳しつつ、僕達は部屋に入った。
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