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私が連れてこられた屋敷は、貧乏伯爵の我が家の10倍はありそうなまるで王宮?と思うような大きな建物だった。 思わず、回れ右したくなった私を誰も責めないで欲しい。 ことの始まりは、いまからひと月ほど前に遡る。 私、セリーナ・モルトンは、あまり豊かではないモルトン領で家族のような領民たちやのんきな両親と貧しいながらも楽しく暮らしていた、いわゆる田舎貴族の娘だ。 ある日、お母様の従姉妹にあたるクラビア公爵夫人から王都のクラビア公爵邸で行儀見習いの名目で働かないかという手紙が届いたのが、きっかけだった。 私としては、行儀見習いと言うことよりお給料が魅力的で一も二もなく引き受けた。 お給料で新しい農機具を領民に買ってあげられるし、お母様を楽させてあげられる。 弟だってこれから学校へ行くのに費用がかかる。 のんきな家族を持つしっかり者の長女としては頑張らないと。 そんなお金に釣られた私が出発する日は、家族や領民がみんなで見送ってくれた。
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