時を越えて

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「ねぇ、覚えてる?」  縁側で日向ぼっこをしている夫に話しかける。 「ほら、この写真」  目の前に一枚の写真を置くと、夫はじいっと見つめる。 「私もあなたも、まだまだ若かったわよね。結婚した日に、写真だけでも撮っておいてよかったわ」 「ああ、佐和子さん……」  久し振りに聞いた夫の声に、目を見開く。  一方の夫は、私の反応などお構いなしに、にっこりと笑って、 「佐和子さん、佐和子さん。私の大事な、好きな人」  指でツンツン写真をつつきながら、楽しそうに私に教える。思わず、私は夫に抱きついていて──。 「本当、写真を撮っておいて、よかったわ……しわくちゃになったあなたも、すてきよ……」
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