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好きな人なら追いかけられたい
ざわざわとする教室が苦手だ。
異世界に来てまで、学校と勉強だ。
しかも途中からとか意味不明だし、内容なんてちんぷんかんぷん。
国防術とか言われても知るかって話で、俺は教科書を雑に鞄にブチこんで教室を出た。
俺の顔を見た何人かが何か話していたけれど、知ったことじゃない。
一人でひっそりと生きること。それが俺の求めている第二の人生だ。
今の俺はオーブリー・ブロンクスという、西洋っぽい世界で生きる中流貴族の令息だ。
今の、というのは嘘みたいな話だが、ちょうど一ヶ月前、前世の記憶が蘇った。と同時に、今までオーブリーとして生きていた人格はどっかへ行ってしまい、前世の自分の人格になってしまった。
前世の俺は、ニホンという世界で平凡な高校生だった。いや、本人は平凡であったのだが、周りがそうさせてくれなかった。
というのも、小学校から高校まで、どこへ行ってもいじめられていたからだ。
確かにうじうじした暗い性格で、皆とわいわいやるよりも、一人で黙々と本を読んでいるほうが好きだったし、できれば誰とも話すことなく静寂を好むタイプだった。
だが、そういう輪からはみ出したやつは、暇をもて余して何か面白いことはないかという奴らの格好のエサであった。
名前が倉井であったことも重なって、ずっと暗い暗いと言われてきたし、無視や物を隠されたりは可愛い方で、高校生になると暴力が入ってきて、俺の日常は平凡というよりいつも暴力から逃げ回る日々だった。
そう、あのとき俺は、クラスのいじめっ子から逃げて、鍵が開いていた屋上に忍び込んだ。
逃げ切れたと思っていたが、念のためもっと奥へ隠れようと移動していたら、誰かが壊してしまったフェンスの横で運悪く転んでしまい、着地に失敗、そのまま足を滑らせて屋上から落ちてしまった。
それが、前世の俺のなんともお粗末な最後だ。
こんな終わりを迎えるなら、せめていじめっ子の顔を一回でも殴っておけば良かったと思いながら地面に落ちていったのを覚えている。
そうして、終わりを迎えたはずが、幸か不幸か俺の魂は転生して別の世界に生を受けた。
そう、今の俺は貴族の令息だ。一般人よりよほど良い暮らしができる。ありがとう神様!裕福な人生を!万歳!
と、ここまでは良かった。
まず、転生に気がついたのは18歳という、すでに青春の最後くらいの年齢。
せめて幼少期であればリセット感があるのに、すでに出来上がってしまっているお年頃。
そして、どこか見覚えのある世界。なぜなら俺は、オーブリー・ブロンクスという男を前世の時に知っていたのだ。
前世の俺には妹がいて、両親は容姿端麗な妹を溺愛していた。変に関わると俺の方が怒られることになるので、関わり合いになりたくない存在だった。
だが、リア充のはずの妹の隠された趣味はBLゲーム。なぜか俺はその趣味を押し付けられる役で、家にいるときは勝手に部屋に入ってきて、毎日のように話を聞かされていた。
いわゆる男同士の恋愛を描いたもので、毎日男に追いかけ回されてひどいことをされているのに、何が楽しくて男の恋愛の話なんて聞きたいのかと、家でも俺の居場所はなかった。
しかも、そのゲームとやらは課金しない場合は、ひたすら地味にハートを集めるというミニゲームをしなければいけなくて、面倒くさがりの妹はその手の集める系は全部俺に振ってきた。
断れば騒ぎ立てて、両親を巻き込んでそれこそ面倒なことになるので、俺は泣く泣く休日を潰してやらされていた。
そう、その妹がハマっていたプリンス☆ラビリンスというゲームだが、俺の転生した世界はまさにそのゲーム世界で、見るもの聞くもの、間違えようもなく見覚えがあった。
そして今の俺、オーブリーはゲームの登場人物だ。
しかし、主人公でもヒーローでも友人とかでも、その辺のモブでもない。主人公をいじめる男、悪役令息だった。
現実世界ではいじめられっ子だった俺は、なんといじめっ子に転生してしまったのだ。
容姿と言えば、前世の薄暗い俺とは正反対のキラキラ系。男らしいガッチリした感じではなく、背は高すぎず低すぎず全体的に細く、色白で綺麗な顔をしている。だが悪役らしく目はつり上がり気味で、一言で言えばキツめの派手な容姿だ。
キラキラ系らしく、プラチナブロンドにエメラルドグリーンの瞳をしている。こんな、眩しい人間になるとは思ってもみなかったので、今でも鏡は慣れない。家の鏡は見たくなくて、全部布で覆っているほどだ。
物語でのオーブリーの立ち位置は、ヒーローであるみんなの憧れの王子様、デュークを巡って主人公と争うライバルとなる。
ライバルというか、オーブリー自体は相当な遊び人で、各方面に浮き名を流しているが、父親が国の要職にいることで、王子の婚約者候補に選ばれる。
平民であったが、公爵家の落とし子であったことが発覚して貴族となり、同じく婚約者候補に選ばれることになった主人公に対して、オーブリーは執拗ないじめを展開する。
どのルートでもオーブリーは主人公を徹底的に痛め付けて蹴落とそうとするが、結局耐え抜いた主人公が王子様に選ばれて婚約、そして結婚してハッピーエンドとなる。
この世界は女性の数が極端に少なく、男同士での恋愛や結婚が普通に成立する。やり方は不明だが男同士で子を成すことができるらしく、王子の婚約者候補は全員男なのだ。
そして、悪役のオーブリーはどのルートでも最悪の最後を迎えることになる。
ならず者を雇って主人公を襲わせようとして失敗し断罪されて監獄送りや、主人公を川に突き落とそうとして失敗して自分が落ちて溺死。ライターの手抜きなのか、主人公を馬で蹴り殺そうとして自分が落馬して死ぬというアホみたいなラストまであった。
俺がオーブリーに転生したと知ったときは絶望しかなかった。ショックで数日寝込んだほどだった。
数日間悩み抜いて俺が出した答えは、ゲームなんて知らねーよ!ということだ。
転生したとしても、シナリオ通り悪役令息になる必要はないし、儚く散ってしまった前世を取り戻すべく俺らしく生きるぞ!と考えを改めたわけである。
しかし、この世界でオーブリーとして生きるのはかなり大変であった。
まずは、王立学校に通っているのだが、勉強に全然付いていけない。
だってすでに卒業を間近にした三年生だ。
全ての科目でほとんど初めまして状態なのに、教科書を見ても全然分からずお手上げ状態。
そして、このオーブリーという男は、かなりの遊び人であったらしいが、悪友からの誘いが絶えなかった。
賭け事に誘われ、女を買いにいこうと誘われ、酒の席にも誘われ、挙げ句の果てには、校内で可愛い系の男子がいたのだが、その子を輪姦しようとまで誘われた。しかもそれはもともとオーブリーが言い出したことらしく、お前が言い出したんだろうと散々責められてひどいめにあった。
とにかく、悪い繋がりは全て断ち切るところから始めなくてはいけなかった。
こうして一ヶ月かけて誘いを全て断り、誰とも話さず、常に一人で行動して隠れるように生活してきた。
悪友達は突然変わってしまったオーブリーに戸惑いながら、遠巻きに見てヒソヒソとなにか話している状態だった。
とりあえずここまで何とか足掻きながらやってきた一ヶ月だった。
家に帰った俺は、早々に部屋に引きこもる。家族の人達にはどう接して良いのか分からなくて、なるべく距離を取るようにしているのだ。
部屋にこもって本を読んでいたら、ノックの音が聞こえたので返事をした。それは執事が俺を呼びに来たものだった。
「最近はあまり出歩いていないようだな。家になど滅多に帰ってこなかったお前がどういう心境の変化なのかと驚いている。まぁ、私も仕事が忙しくてここには滅多に帰ってこられないが……」
執務室に入ると、オーブリーの父親が座っていて、俺にも座るように言った。この父親の顔は俺になってから一度しか見たことがない。
仕事中心で家庭を顧みない典型的な父親に見えた。
「用件はなんですか?」
「ああ、実はデューク王子の婚約について話が進められていてな、喜ばしいことに候補者にお前が選ばれたのだ」
来た!と俺の体は震えた。
ついに、ゲームのシナリオが始まったのだ。俺は早速断ろうと口を開いたが、それは父親の言葉で遮られた。
「言っておくが、拒否権はないぞ。私が委員長をやっているから特別にねじ込んだんだ。断ったりしたら、私の顔に泥が塗られることになる」
なんて父親だと思った。オーブリーの性格が曲がるのも無理はないという目で父を見た。
「ああ、お前の嗜好が違うのは分かっている」
「へっ?」
「つまり、お前は抱く側だろう。殿下もそちらを好まれるらしいから、合致しないのは分かっている」
「なっ……なっ……」
どうして息子の嗜好を父親が調査済みなのかと不思議を通り越して怖くなったが、よく考えれば女性の恋人もいたらしいので、想像してくれたのだなと考えることにした。
「私は選ばれろとは言っていないのだ。お前にはある候補者を潰して欲しいのだ、コーネル公爵家の子息、ジュリアンだ」
その名前を聞いて俺の体に電流が走った。まさにそれは主人公の名前だった。
「政治的な問題だからお前には分からんと思うが、コーネル家の人間を王家に近づけるのは、私の立ち位置からは面倒なことになるんだ。どんな手を使ってもいい。ジュリアンが殿下に選ばれないようにするんだ」
俺はずっと疑問に感じていたことが、もやもやとした雲が消えるみたいになくなっていったのを感じた。ゲームのオーブリーは執拗にジュリアンを蹴落とそうとするが、なぜかデューク王子には関心がないというか、迫るような気配を見せない。
なぜそこまで主人公にというのが謎だったのだ。
「お前が失敗すれば、わが家は確実に衰退することになる。私の身も危うくなるかもしれん。今の生活を守りたいのなら、何としてでも、ジュリアンが選ばれるのを阻止するんだ」
これは面倒なことになったと、部屋に戻ってから俺は頭を抱えた。
ただ、イベントを回避すれば死亡フラグは回避できると思っていた。しかし、オーブリーの使命は王子を射止めることではなく、コーネル家の台頭を阻止することだったのだ。
「そんなのって……、ありかよ。やらなきゃ家がヤバくて、やれば馬から落ちて死ぬ……。最悪だ……」
どうすればいいのか、答えが出ないまま、俺の悩ましい夜は続いていくのであった。
□□
「それでは、これより婚約者候補に選ばれた方々をご紹介します。候補者の方は、婚約者が決まるまでこちらの王宮で過ごしていただきます。さぁまずはこの方から……」
王宮の庭園で婚約者発表のイベントが開かれていた。司会に呼ばれた候補者は壇上に上がって盛大な拍手で迎えられる。
デューク王子といえば、向かいの高い位置に用意された席からこちらを優雅に眺めている。
金髪に碧眼の王子様だ。ゲームのトップ画面に毎回出てくる笑顔が目に残って離れなかったが、まさにその人が座っていた。
候補者は六人、そのうちの一人は俺だった。父に押しきられて結局断れずに参加することになってしまった。
美人系から可愛い系まで、色々なタイプの男が揃えられている。
俺は主人公のジュリアンを探した。ゲーム内では、そういう設定なのかジュリアンの姿は細かく描かれていない。
だいたい黒髪の後ろ姿とか、髪で隠れた横顔のスチルしかなかったと思う。
「次はコーネル公爵家のご子息、ジュリアン様です」
拍手が沸き起こり、女性達がキャーキャー言う声が聞こえた。
壇上に現れたのは、他の候補者とは違う、どちらかと言うと男らしい精悍な顔つきの青年だった。黒髪に青い瞳は確かに設定通りだが、もっと可愛らしい、なよなよした男を想像していたので驚いた。
背なんて俺よりも高いし、体もガッチリしてて逞しそうである。まぁ王子の好みもあるし、様々なタイプを揃えるためか、こういうのも必要だったのかと思うことにした。
観客を入れて大々的に行われたイベントは、ゲーム通りに進行していった。
俺はゲーム内で何があったのかもう一度考えていた。確か王子との歓談タイムで主人公は王子に見初められる。他の候補者とは明らかに違う扱いになり、それにライバル心を抱いたオーブリーの嫌がらせが始まるとかそんな流れだったと思う。
俺は嫌がらせとかそんなのしたくないけど、ジュリアンを王子に近づかせるのも阻止しないといけないのだ。
それでは、しばらくデューク様との歓談タイムですと司会が言って、拍手がパラパラと起きた。
デュークが椅子から立ち上がり、優雅に候補者の輪に近づいてきた。
候補者は明らかに色めきだって、皆デュークが来たら我先に行こうという気配が見えた。
俺はその中でパニックだった。この五人を押し退けて、自分がデュークに近づいていくような技は持ち合わせていない。
どうやって、一目惚れのような最初の出会いをどう阻止するのか。焦りに焦った俺は体が先に動いて、思わず掴んでしまった。
「え?」
「あ!」
俺の手は勝手に動いて、ジュリアンの服の袖を掴んでしまっていた。
しかもパニックが加速して、袖を掴んだまま体が固まってしまった。
「どうしたの?何か用?」
そりゃそう言うわ。王子が来てくれる絶好のタイミングで、服を掴んで止めてくる男がいるのだから。
「あっ…ああの!君はジュリアン……だよね?おっ俺は…、オーブリーと言います」
「ああ、君はブロンクス伯爵のご子息だよね。俺は確かにジュリアン・コーネルだよ」
ジュリアンはすごいいいヤツらしく、俺の挙動不審な言動にちゃんと返してきた。それだけでも、主人公としての存在感を感じる。
俺の頭はここからどうするべきか、ぐるぐると考えが回って、パニックで本当に目が回りそうだった。
物理的に阻止など無理に決まっているのだ。
「えっええと……、俺は……君と話がしたい」
完全に血迷ってしまった俺は明らかにおかしいことを口走ってしまった。
「え?俺と……?」
ジュリアンはぽかんと不思議そうな顔をしている。分かる、十分に分かる!絶対おかしいよこんなヤツ、早くお前なんて知らねーよって言って断ってくれと祈るような気持ちで俺はジュリアンを見つめた。
「俺と話がしたいの?いいよ」
ジュリアンは目を細めてふわりと微笑んだ。
それを見た俺の心臓はなぜかドキリと鳴った。
って、心臓がなっている場合じゃなく、なぜ断ってくれなかったんだ!良い人過ぎるだろう主人公!
俺は愕然としながら立ち尽くしていた。
□□
王子の回りには候補者が集まって、シャンパン片手に和やかに会話をしている。
しかし、なぜかその横で、俺はジュリアンと話をしていた。他の候補者がたまにチラチラと見てくる。なぜこちらに来ないのか、これも作戦なのかと疑いの視線をビシビシ感じる。
「オーブリーは今、王立学校の三年生か。懐かしいな、俺も二年前は通っていたよ」
「え、ジュリアンは先輩なの?公爵家の人なのに?そしたら俺が一年の時、同じ校舎で勉強していたんだね」
俺の咄嗟のアホみたいな提案に、ジュリアンはちゃんと対応してくれて、普通に会話が進んでいる。しかも王立学校の先輩だということが発覚した。学校は貴族なら誰でも入るわけではない。ジュリアンのような高位の貴族はむしろ、そんなもの入らなくてもちゃんと教育を受けれるし人脈を築ける。
学校にいるのは、オーブリーのような中流貴族や下位の貴族が中心だからだ。
「俺はもともと市井にいたからね。貴族社会を学ぶには学校は勉強になったし、良い経験だった。実をいうと俺はオーブリーのことを前から知っているよ」
「へ?おっ…俺を?」
「ふふっ、だって君は入学してからすぐ目立っていたよ。学校に女性を連れ込んで騒ぎにもなったじゃないか。他にも色々と楽しそうな噂は聞いたけど」
以前のオーブリーのやんちゃが、こんなところでも明かされて、俺は真っ赤になって恥ずかしくなった。
「あ……あの頃は、色々あったというか…、若気の至りというやつで……」
「ふふふ、まぁ確かにそういう時期はあるよね。俺も学校抜け出して仲間と飲みに行ったりもしたし」
絶対他にも色々知っているだろうけど、さりげなくフォローしてくれたジュリアンの優しさを感じで俺はうるうるしてしまった。
何回も思うけど、主人公良い人過ぎる!
「あ…、ごめん。こんなおかしいことになっちゃって……」
「ん?」
「だって、今は殿下とのお話タイムだろ。なのに、なんで俺なんかと……、絶対おかしいって…その、自分で誘っといてなんだけど……」
他の候補者に遅れを取ってしまった状況に、申し訳なくなった俺はついこぼしてしまった。
「ああ、確かに。二人でこっちで話しているのはおかしいね。でも、なんだろう、楽しくてそういうこと忘れてたよ」
「え…」
ジュリアンは本当に楽しそうな笑顔でニカリと笑った。それを見て俺の心臓はまたバクバク鳴り出して、体がおかしくなったみたいで、思わず心臓を抑えて目をそらしてしまった。
「大丈夫?具合が悪いの?」
「いっ…、そっそんな!大丈夫!元気元気!ちょっとお腹が空いたくらいで…」
それを聞いたジュリアンは、じゃあこっちだと軽食コーナーに、俺を引っ張っていって、次々と皿に盛り付けて渡してきた。
「気が利かなくてごめんね。いっぱい食べて」
「……あっ…ありがとう」
せっかく盛り付けてもらって悪いので、俺はパクパクと食べ始めた。
ジュリアンはまだ王子のところへは行かずに、なぜか俺の隣で俺が食べるところを嬉しそうに見ていた。
「あっそれ、俺の好きなやつだ。美味しいよね」
ちょうど俺がフォークに刺したやつを見て、ジュリアンがそんなことを言ったので、俺は何も考えずにそのまま差し出した。
「じゃあげるよ。はい、あーんして」
ジュリアンは驚いたように目を開いたが、そのまま素直に口を開けてパクっとそれを食べた。
「ん…うまい」
ジュリアンが笑ったので、俺もつられて笑顔になった。
……ん?
なにかおかしい……
なんで俺、こんなところでジュリアンと仲良くしているんだろう。
いや、ジュリアンを王子に近づけないことは成功しているけど……。
なにか間違えた気がする……。
「オーブリー?」
考え込んで黙ってしまった俺に、ジュリアンが声をかけてきた。
「ほら、ここに付いてる」
俺の口の端に付いてしまった食べかすをジュリアンは手で取ってくれた。そして、そのまま自分の口に持っていってペロリと舐めた。
「うん……これも美味しい」
そう言って、今度は妖しげな顔で微笑んだ。
俺は何が起こったのか一瞬分からなかったけど、事態を飲み込むと、またまた赤くなって口から泡を吹きそうなくらい慌てた。
ジュリアンの艶かしい舌が頭にこびりついて離れず。心臓はバクバクと鳴り響くばかりで、本当に体調が悪くなってきた気がした。
本当、何してんだよ、俺……。
司会が歓談タイムの終了を告げて、王子は手を振りながらもとの椅子へと戻っていった。
とりあえずは、今日のイベントは終了だ。
各々用意された部屋に戻るのだが、途中で観覧者の中から俺を手招きして呼んでいる父親の姿を見つけた。
俺は言いたいことがあったので、鼻息を荒くして父親のもとへ駆けつけた。
「親父!てめー!政治的な問題だからとか俺には分からねーなんて、カッコつけたこと言いやがって!単純に賭け事じゃねーか!!」
他の候補者に口の軽いやつがいて、この候補者選びが賭け事になっていることを聞きつけたのだ。
父親は俺を物陰に引っ張りこんで、声を潜めて話し出した。
「バレたら仕方ない。どの家の子息が王子に選ばれるか秘密裏に行われていることだ。お前は予定通り一番人気のコーネル家を潰すんだ。私は二番人気のやつに財産のほとんどを賭けている」
「はぁ!?何バカなことしてんだよ!?頭おかしいよ!」
俺は賭け事にそんなに注ぎ込むなんて考えられないので呆れたが、この世界の貴族はそういう天国か地獄かみたいなのを楽しむやつらが多いらしい。まさか、それが父親だったとは残念だ。
「それにしても、今日のイベントは良かったぞ。まさか、お前がジュリアン相手に色仕掛けをするとは思わなかったが、そういう妨害もこの際ありだな」
「はあ!?」
俺は父親の言葉に耳を疑った。
「どこをどう見ても、ジュリアンを誘惑していただろう。なかなか上出来だ。そっちもイケるんだな」
「はい!?」
どこをどう見たらそうなるのか、父親の頭が全然理解できない。
そっちもとかもよく分からないし、俺は口をパクパクとさせて、言葉が出てこなかった。
「色仕掛けがどこまで通用するかわからんが、とりあえずその線で攻めてくれ!よろしく頼むぞ」
唖然として固まる俺の頭をぽんぽんと叩いて、父親は帰っていってしまった。
「いろって……、いや無理でしょ……」
人々がいなくなって閑散とした庭園に、俺の情けない声がむなしく響いたのだった。
□□
現実世界での俺の恋愛について語るのは簡単だ。一言ですませられるからだ。
つまり、童貞であった。
当たり前の話だ。容姿とかは別にしても、いじめられっ子にわざわざ声をかけてくれる女の子はいなかった。女子からはずっといないものとして扱われていた。
初恋は小学生の時、その子にも無視をされて儚く散った思い出だけだ。
この世界のオーブリーは、多分、いやもう絶対経験豊富だ。男よりも女性を好んで相手にしていたらしいが、可愛い後輩を輪姦しようとするくらいだ。男も普通にイケたのだろう。
経験というのは本人の自覚があるのが前提なので、俺に変わってしまったからには、オーブリーのそっちの知識や経験は俺には全く意味がない。
あのバカ親父は色仕掛けとか言ってきたが、脳内童貞の俺が何をどうやって仕掛けるのか、こっちが教えて欲しいくらいだ。
俺は自分に与えられた部屋で机に突っ伏しながら悶々と考えていた。その時、ノックの音がした。誰かが訪ねてきたらしい。
「あっ…、ジュリアン」
ドアを開けるとそこには、ターゲットであるジュリアンが立っていた。昼間はみなスーツを来ていたが、今は軽装でゆったりとした部屋着だった。雰囲気が変わったことにまたドキリとしてしまう。
「もう休んでいた?良かったら一緒に浴場へ行かない?」
「え?風呂?」
そう言えば王宮には、大人数が入れる大浴場があると聞いていた。もちろん王子は専用の風呂なので別になる。
「ああ、いいけど」
俺がそう言うと、ジュリアンは嬉しそうに微笑んだ。
ニホンで温泉に慣れ親しんでいた俺にとって、大浴場なんてのは、男同士で普通に入るものなので恥ずかしいとかは全く気にならない。
浴場に着くとその広さにまず驚いた。自宅の風呂は小さいバスタブに湯を入れた簡単なもので、やはりお風呂はこうでないとと、俺のテンションは絶好調に上がりまくった。
「今日は候補者に貸し切りだって。といっても他のやつらはみんなすでに入ったみたいだね」
「やったー!じゃあ広々使えるじゃん!」
俺は大喜びで服を脱ぎ捨てて、大浴場の大風呂に飛び込んだ。
「サイコー!気持ちよすぎ!幸せーー!」
南国風の装飾がなされた風呂の造りで、お湯には花びらまで浮いている。浮かれながらお湯から顔だけ出して、ジュリアンの方を見た俺は衝撃を受けた。
「ふふっ、お湯に飛び込んだの?子供みたいだね、オーブリーは…」
微笑みながら歩いてくるジュリアンの均整のとれた逞しい体つきは、まるで彫刻のようだし、何より股間についているその立派なものに、目が釘付けになってしまった。
膨張していない状態でも、かなりの大きさと長さがあり、それがブラブラと揺れているのは、何とも言えない光景だった。
一応オーブリーのモノも、小さいわけではない。平均…くらいではないだろうか。ただ、圧倒的な違いと、体質的に毛が薄くてよけいに恥ずかしくなってきた。
お湯に顔を半分沈めて冷静さを取り戻そうとしていると、当の本人はお構いなしにバシャバシャ入ってきて、なぜか俺の近くに座ってきた。
「さすが王宮の浴場だ。すごく大きいね。うちにも浴場はあるけど、ここまで広くはないな…」
「へぇー、ジュリアンの家にもあるんだ…。羨ましい」
俺がぶくぶくしながら話していると、ジュリアンは、また子供みたいなことしてと可笑しそうに笑った。
一人で意識しているのがバカらしくなった俺は、お湯から飛び出て浴槽の縁に腰かけた。
座るとちょうどお湯は臍の下辺りなので、お粗末なモノを披露せずにすんで俺はほっとした。
濡れた髪が邪魔なので後ろにかき上げていると、なんだかやけに視線を感じた。よく分からないがジュリアンが俺のことを食い入るように見ていた。
「え、なに?なにか付いてる?」
そのまま視線を外さずにジュリアンは近づいてきた。なぜだか、追い詰められた小動物のような気分になって俺の心臓はまたうるさく騒ぎだした。
「綺麗だなと思って」
「……へ?俺が?」
まただ、と思った。変な雰囲気になるときのジュリアンはいつも妖しい目をして微笑んでいる。
「言われたことはない?」
「え!?そっ、そんなこと、あるわけない……」
「本当?君の恋人たちはいったい何を見ていたんだろうな…」
そう言うと、なぜかジュリアンが不機嫌そうな顔をしている。こちらとしては、そんな褒め言葉必要ないのに……。
ジュリアンがなぜそんなことを言い出したのかと俺は瞬時に頭を働かせた。思い付いたのは、ライバルとしての品定めではないかということだ。
自分との違いや、王子の好みに合っているかなどを裸にして手っ取り早く確認しようとしているのではないか、ということだ。
「ここ…、触ってもいい?」
早速ジュリアンは確認の作業に入るのだろうか。俺は体を調べられても、何が良いか悪いかなんて知らないし、その言葉をよく確認せずにいいよと言った。
俺の了解を得たとばかりに、ジュリアンは嬉々として近づいてきて、いきなりキュっと摘まんできた。
「いっ…!…ええ??」
「ああ、確かにまだ固いね……ここは未開発だ」
ジュリアンが摘まんできたのは俺の乳首で、そのまま、ひっぱったり押し潰したり指でこねたりと、無茶苦茶にやりだした。
ありえない光景に、俺の頭はすっかり停止して、ただジュリアンのやることをバカみたいに口を開けて見ていたが、だんだんピリピリとむず痒い感覚を感じ始めた。
「んっ……、なっ……なんか、くすぐったいよ。ジュリアン…もう、やめ……」
「良くなってきた?じゃあ……」
そう言ったジュリアンは俺の胸に顔を近づけて、乳首に吸い付いてきた。
「あああ!なっ……えっええ!?」
もっとありえない光景になってしまい、焦った俺はもがいて逃げようとしたが、後ろは浴槽の縁で逃げ場がなかった。しかも逆にもっと胸を突き出す体勢になってしまい、勢いづいたジュリアンは片方を口で咥えて、片方を指で刺激し出した。
ペロペロと舐めたと思えば、唇で引っ張って、歯で甘噛みして、強く吸われた。
「ひぃぃ!!もっもうだめ……、変になる!こんな……おかしい……」
「ほら、見て。柔らかくてピンク色になってきた。最高に美味しそうだ」
ジュリアンが楽しそうに、俺の乳首を爪で弾いた。
「ああん!」
「しかも良い音色だ」
嘘だと思った。変な声が出た。自分からこんな甘ったるい声が出るなんて、とても信じられなかった。
性的な知識などゼロに近い俺は、恐ろしくなってきて目尻に涙まで出てきた。
そのまま、ジュリアンの方を、どうかやめて欲しいと思いながら必死に見つめた。
俺と目が合ったジュリアンは、ぶるりと身震いした。そして、今までの無害な優しいイメージが一転して、獰猛な肉食獣みたいな顔になった。口を開けたらキバでも出てきそうな鋭さだ。
「そんなに怯えた目をして……、どこまで演技なのかな……。ほら、俺を懐柔したいなら、もっと大胆に迫ってこないと」
その言葉を聞いて、ごちゃごちゃの頭であったが俺はジュリアンの考えていることが分かった。すでに父親の考えは悟られているということだ。
「あっ……。ジュリアン。もしかして、知って……るの?」
「俺をデューク様に近づけたくないんでしょう。どうせ、同じ公爵家のもう一人に賭けているんだろう。ブロンクス伯爵の考えはすぐに分かるよ。そして息子を妨害させるために送り込んだ……」
「そんな……知っていて……あん!どっ…どうして……」
話ながらも、ジュリアンの手はずっと俺の乳首を握っていて、時々こねてくるので、すでに痺れるような快感を感じるようになってしまい、俺は変な声が出てしまうのを抑えられなかった。
「んー……、袖を掴んできたオーブリーがあまりに可愛かったから、つい誘われちゃった。相当な遊び人と聞いていたのに、ここを弄っただけで、そんな反応をするなんて……、演技にしては上手過ぎるよ。俺をその気にさせるなんて…」
ジュリアンはザバンと音を立てて立ち上がった。俺の目の前にちょうどその股間にそびえ立つ肉棒が見えた。赤黒く脈打つそれは、かなり大きく凶器にしか見えなかった。
「あ……すっ…すごい」
「ふふっ、ありがとう。俺のは大きいから、頑張って口に入れてもらおうか」
「へ!?くっ……口に?」
「あれ?男のモノを咥えるのは初めて?」
俺は衝撃で言葉が出なくなり必死で頷いた。
萎えるだろうと思いきや、ジュリアンはそれは嬉しいと言いながら遠慮なく俺の口に押し入れてきた。
「んーーー!!ぐっ……んっっ」
いきなり喉の奥まで押し込んできたので、俺は危うくえづいて歯を立てそうになったが、なんとか堪えた。
「ほら舌をちゃんと使って、そう…ゆっくり舐めるんだよ。いいね、時々咥えて、唇で吸い付きながらしごいて……、あぁ……うん、上手だ…」
なんでこんなことになったのかと泣きたくなってきたが、とにかくこの状態を終わらせなければと、俺は言われた通りに必死に口淫を続けた。
しばらく続けていくと、不思議とだんだんジュリアンの肉棒が愛しい気持ちになってくる。気持ち良さそうなところを感覚で見つけて、そこを強く吸ったり、舌で入念に舐めていくと、だんだんジュリアンの息が上がっていくのが分かった。
「はぁ……、いいよ。気持ちいい……、あぁ出そうだ。オーブリー…、口に出していい?」
「んんー!?」
それはさすがに抵抗があったのだが、俺の答えを聞く前にジュリアンは俺の頭を鷲掴みにして、頭を揺らしてパンパンと腰を打ち付けてきた。
「あぁ、オーブリー…、イクよ…」
ジュリアンは腰の動きをピタリと止めて、俺の喉の奥に大量に注ぎ込んできた。
「んんん!!」
口いっぱいに苦くて青臭い味が広がって俺は吐きそうになったが、ジュリアンは頭をちっとも離してくれなくて、俺は結局飲み込むしかなかった。ごくごくと音を立てて飲み込んだ。喉に残る味だ。決して美味しいものではない。
「はぁ…上手に飲めたね」
そう言ってジュリアンは、俺の口からズルリと自身を引き抜いて、そのまま噛みつくようなキスをしてきた。
俺の口の中はいまだ、ジュリアンの味が残っているのに、関係ないというように舌をぐるりと這わせて、びちゃびちゃと音を立てて舐められた。
「良かったよオーブリー。じゃあ、次は下のお口だ」
「えっ…あっ…ちょっ…」
一仕事終えて蕩けた頭でも衝撃的な台詞に俺は目が眩んだ。もたついていると、あっという間に裏返しにされて、下半身はお湯に浸かったまま尻を突き出す格好にさせられた。
これから起こることを想像して、俺は絶望しか思い付かなかった。
□□
「ひぃぃ……!だっ……だめだよ。お湯が……入っちゃう!」
「大丈夫だよ。全部ちゃんと飲み込んだよ。俺のが全部入るとは…、オーブリーの孔は名器だね」
今までで一番嬉しくない褒め言葉をいただいた俺は、ここまでさんざん後ろの穴を弄られて、もうすでにぐったりとしていた。
「も……もう、終わり?」
「冗談!ここまで時間をかけてほぐしたのに。これからが本番だよ」
「ひーーん!!うっう嘘ぉ……」
ジュリアンがユルユルと腰を動かし始めた。後ろから出たり入ったりするのがもどかしくて、痛みと苦しみだけだったのが、知りたくなかった変な感覚が沸き上がってくる。
「嘘って……、オーブリーは後ろは初めてでも、入れたこともないの?」
「あ……は…、うん……わっ…わかんな……い」
「どういうこと……、初めてのフリでもしろって言われてるの?なぜ?分からないな……」
ジュリアンは考えながら抽挿を速めてくる。頭の中までかき混ぜられているみたいで、俺はもう考えるのを放棄して、あの事情が素直に口からこぼれてしまった。
「ほんと……わかんな…い……。あっあああっ、いいっ…少し前に…記憶……なく…なっちゃって…」
「はっ…記憶…喪失?騙すにしては…、お粗末だね」
後ろを掘られながら、俺は自分のものが、パンパンに張りつめて立ち上がっているのを痛いほど感じる。つい手を伸ばして、擦っていたらジュリアンに手を取られてしまった。
「こら、悪戯はだめだ。記憶を無くして、分からないならこれはどうかな?」
ジュリアンの動きが変わり、先端のかさの部分をナカの奥の方に擦り付けてきた。そして、ある一点を刺激された時、俺の全身は電流が流れたみたいにビリビリとした強烈な快感がはしった。
「なっ……!ああああああっううう!あっなに?だっだめぇ!!おかしい……体が……へんになっちゃった…ああぁぁ!」
「ああ…ここがオーブリーの感じるところだね。本当に知らないの?男もここを弄られると気持ちいいんだよ」
「しっ……知らない……やだぁ…。ほん…しらな……」
「まぁ……どっちでもいいか。オーブリーの孔は気持ちいいし」
パンパンと音を立てながら、ジュリアンは腰を打ち付けて攻め立ててくる。その度に意識が飛びそうになり、俺は涙も涎も垂れ流してあられもない声をあげた。
「本当はね…。オーブリーのこと一年の時に目をつけていたんだ。気の強そうな顔が好みだったからさ。でもバリタチだって聞いたから、残念と思って諦めたんだ。それが今になって、オーブリーに突っ込んでるなんて、俺はなんて幸運なんだろうね」
「はぁんっ……あああっ、あんああ……いっ……はげし……、あぁ…壊れちゃ……う。んっはぁ……」
ジュリアンは俺に突っ込みながら、ベラベラ喋っているが、意識が飛びそうな俺は快感で頭がおかしなことになっていて、ジュリアンの言葉が頭に入ってこない。
「あぁ……、俺好みの顔でツンとしているクセに、弄ったらこんなに可愛いなんて……、反則だよオーブリー。はぁ…やばいね……止まらないんだけど。ナカも気持ちよすぎ……」
「あっ…だめ…くるよ……。ジュリアンだめ…、でっ出ちゃう……あああっいっ……!!」
ぐったりした俺の上半身を持ち上げて、ジュリアンは勢いをつけて、深く打ち付けてきた。
その深さとイイところを強く擦られて、俺は前も触らずにイッてしまった。
勢いよく飛び出した白濁がお湯にバシャリと飛んで、ぽたぽたと垂れ続けている。
うねりながら伸縮するナカの具合に堪えきれなかったのか俺がイッた後、ジュリアンが喉を鳴らすような声を出して最奥で達した。どくどくと熱いものが奥を満たしていくのが分かる。
「あああ……熱い……お腹…いっぱいになっちゃう……」
「はぁ…………、まさかもっていかれるとは……」
ジュリアンは達した後の余韻を楽しんだ後、ズルリと引き抜いた。後ろの孔からはジュリアンのものが溢れていく。
しかも、ジュリアンは指を入れてかき出してきた。
「ははっ、すごいな…、前からも後ろからも溢して、エロすぎるだろオーブリー…」
俺の腰はガクガクと揺れて、全身から力が抜けていき意識が朦朧としてきた。
「ば…か…、ジュリ…アン」
「ん?」
「ナカに…出すなんて…、バカぁ……、おれの…壊れちゃった……」
クスリと笑った声がして頬にキスが落ちてきたような感覚がした。俺が覚えているのはそこまでで、そこで完全に意識を失った。
□□
雲ひとつない青空の下、草原を馬がかけていく。
遠くに山々が連なって、絵画の題材にでもなりそうな美しい景色だ。
そんな最高のロケーション。少し離れたところで、それぞれ馬に乗って、楽しそうに話をしているジュリアンとデューク王子の姿が見えた。
俺の体を張った努力も虚しく、二人は青空に負けないような爽やかな笑顔で語り合っている。
今日は殿下と乗馬で交流というイベントだ。
俺は当然馬に乗れない。しかも、今日は別の意味でも乗れない。腰も尻も痛くてとてもじゃないけどあんなのに乗ったら悲鳴を上げて落馬して死ぬ。動くのさえしんどかった。
昨日の夜、大浴場でジュリアンに容赦なくヤられて、俺の後ろバージンはなくなった。
別に守り抜く相手もいないしと開き直ってみるが、昨日はあんなに俺を翻弄して好き放題やっておいて、今日は王子と楽しそうに過ごしているジュリアンを見ていると、なぜだか無性にムカムカしてたまらない。
今朝、俺は浴場で意識を失ってから自分の部屋で気がついた。どうやらジュリアンに体を洗われて運んでもらったらしい。
どう顔を合わせれば良いのか悶々としていたが、蓋を開けてみれば、ジュリアンと一言も話せず俺が来たときは王子とすっかり良い感じになっていた。
分かっている。これはゲームのルートで出てくる乗馬イベントだ。
二人はこのイベントで急速に仲が良くなるのだ。そして、悪役令息の俺はそんな主人公ジュリアンを馬で踏みつけようとして落馬して死ぬという最初の死亡フラグ。
そして実際の俺は、尻が痛くて馬になんて乗れずに、草原に用意された休憩所でずっと長椅子に座ったまま動けないのだった。
「よう!オーブリー」
馴れ馴れしく声をかけられて、振り向くと同じ候補者でミルズとかいう男が立っていた。可愛い系と綺麗系で揃えたと思っていたが、彼はジュリアンと同じどちらかと言えば男らしい容姿のやつだった。
派手な顔つきとオレンジ頭が悪目立ちしている感がある。
「ありゃまー、殿下のお相手は一番人気のジュリアンで決まりみたいだな。俺らは意味なしだったみたいだな」
「そ、そうだな…」
ミルズは遠慮なく俺の隣に腰掛けてきた。知り合いかもしれないので、俺は慎重に対応しなければいけなかった。
「どちらを選ばれるかは殿下次第だが、抱かれる方を選んだわけだ。意外だったなー」
ここで俺のもやもやしていた疑問がはっきりと見えた。なぜ俺が主人公のジュリアンにヤられたのか、考えてみたらおかしかったのだ。
「だっ…抱かれるって…王子は、抱く方じゃ…」
「あれ?お前知らねーの?殿下はどっちもイケんだよ。だから、ネコとタチと揃えたわけだろ。俺とジュリアンとお前がタチで後のヤツはネコだ」
「え!?うっ……嘘!?」
ネコとかタチは、想像したらなんとなく意味が分かる。つまりどちらかということだ。
確かにゲームは全年齢対象なので、性的なシーンはキスくらいだ。いつも王子がリードしている描写だったので、てっきりそっちかと思っていた。
根底から覆される事実に俺の頭はこんがらがって、訳がわからなくなった。
青くなりながら呆然としている俺に、ミルズはペラペラと話しかけてきた。
「でも、久々だなー、オーブリー。前はよく一緒に女引っ掛けにヒガシ辺りに行ってたよなぁ。最近どうなん?まだあの辺食いまくってんの?」
「いっ…、いや…、もう行ってないよ」
話の流れからどうやらオーブリーの悪友らしく、こんなところでも出てくるのかとよけい疲れてきた。
緊張でおどおどするのを悟られないように、俺は平然を装った。
だが、付き合いの深さなど分からないが、ミルズは俺の違和感に気がついたようだった。
「……あれ?なんか……、オーブリー変わった?」
「え!?べっ別に、なにも……」
「……なんか、反応が……可愛い」
「な!?」
なんてことを言い出すのかと、パニックになった俺は真っ赤な顔で後退りした。
ところが、ミルズの目はやけに鋭くなって、距離を詰めてきた。
「もともと、お前はどっちもイケると思ってたんだよ。前は絶対タチだって雰囲気出してたけど、なんか……、やっぱりお前こっちイケるんじゃね?」
「そっ……そんなわけねーだろ!俺は抱かれるなんて、むむむっ無理だ。ちょっと近いから、離れろよ!」
近づかれたら、何か見破られてしまいそうで、俺はこっちへ来るなと必死の目でミルズを見た。
「え……、やべー。今日のオーブリー、なんかすげーエロいんだけど。ぞくぞくしてきた」
「するな!バカ!ちょっ…いい加減に…、ひゃああん!」
近づいてきたミルズがいきなり俺の尻に触れてきた。前日からのむず痒さを引きずっていた俺は、少し触れられただけでも、ビクリと揺れて変な声が出てしまった。
「おい、マジか…、なんて声だしてんだよ。あっ……!やべー、マジで勃起してきた」
「ばっばか……!」
ミルズはついに俺にのし掛かってきた。まともに動けない状態で、必死に押し戻そうとするがミルズはビクともしない。
「うわっ、マジエロいよ。なぁ入れるのが無理なら舐めてよ。そんで顔にかけていい?」
「どけ!バカ!やだよ!ふざけんな離れろー!」
力の入らない腕をパタパタと振り回して、ミルズを叩いていたら、パカパカと馬のひづめの音がすごい勢いで近づいてきた。
「なっ…なんだ…」
その音に顔にかけると言って大騒ぎしていたミルズが驚いて顔を上げた。すぐ横に到着した馬から颯爽と降りてきたのは、ジュリアンだった。
「こんなところで何をしているの?ミルズ、デューク殿下がお前をお呼びだ」
「え?俺を?」
まさか自分をという顔でミルズは驚いていたが、殿下のお呼びとあっては行かないわけにいかず、股間を押さえたまま、ジュリアンが乗ってきた馬を借りて、王子のところへと慌てて走っていった。
ミルズの急襲から解放されて、俺は安堵のため息をついた。
「ジュリアンありがとう、助かったよ」
何か物言いたげな顔で近づいてきたジュリアンは、俺の腕を持ち上げて、来てと言って森の方へ引っ張って行った。
森の中へ入ってきて、開けたところで木の根もとに座らされた俺の前に、ジュリアンが仁王立ちして見下ろしてきた。
「オーブリー、今日は体が辛いだろうから、そっとしてあげようと思ったのに…。どうしてあんなところで、ミルズのちんこをデカくさせてるんだよ」
「おっ…、俺のせいじゃない!勝手にあいつがサカってきたんだ!だいたい、尻が痛くてろくに動けなくて逃げれなかったんだよ!おっ…お前のせいだろ、ジュリアン」
俺は理不尽な言われように抗議した。体が動いたなら、あんなやつに捕まることなどなかったのだ。
「へぇ…。俺のせい?オーブリーは色仕掛けで俺を操ろうとしたんでしょう。せっかく乗ってあげたのに…。あぁ、分かった。淫乱なオーブリーくんはまだまだオスの味が足りなかったのかな」
「そっ…そんな…」
ジュリアンはトラウザーズをくつろげて、まだ大人しい自身を取り出してきて、そのまま、俺の口に当ててきた。ジュリアンのオスのにおいが漂ってきた。
「舐めてよ。俺と殿下をくっつけたくないんでしょう。これを殿下に入れてもいいんだよ」
俺は王子がジュリアンのものを咥えているところを想像して、すごく嫌な気持ちになった。どうしてだろう、とにかく嫌で……、これは自分のものだとなぜだか、強く思う気持ちが出てきた。
「い…いやだ」
俺が小さい声で言うと、ジュリアンは満足そうに微笑んだ。そして、いきなり大人しかった肉棒はぶるりと揺れて固くなり立ち上がってきた。
促されているようで俺はおずおずと口を開いて舌を出した。そのまま、ペロペロとジュリアンのものを棒アイスを舐めるみたいに舌を這わせていく。
「ふっ……んっ…くっふ………あ…ふ……んん…」
森の中には俺が夢中でジュリアンのを、舐めて口にふくんで、じゅるじゅると吸う音が響いている。
どれくらい経ったのだろうか、ジュリアンのものは、かなりの固さと大きさになり、全部口に収まらなくなった。それでも出来るところまで入れて必死に吸い付いた。
「んっ…、そろそろイキたくなってきた。どこがいい?お口の中に全部出す?それともミルズがやりたがってた顔にかけようか?ふふっ…バカなやつだ。もうオーブリーは俺のものなのに……」
口淫に夢中になっていた俺は、ジュリアンが何を言っているのかぼんやりと聞いていた。どこがいいのか聞かれたらしいが、そもそも、普通はどこに出すのか分からなかった。
「うっ…昨日みたいに…おくちに…いっぱい…出して…」
「はぁ…オーブリー…、俺を煽るなんて……。分かった。悪い子のお口に出してあげるよ。ちゃんと飲み込むんだよ」
俺の答えに火がついたみたいにジュリアンの肉棒は膨張して熱くなった。ジュリアンも腰を使って俺の頭を掴んで揺らしながら、喉の奥に押し込んで体をぶるりと震わせて達した。
白濁が喉に飛び散って、それを目をつぶって必死に飲み込んだ。苦いし青臭いのは昨日と同じだが、多少慣れたので我慢して飲み込めた。
「うぅ…苦かった」
涙目になってムッとしている俺の顔をジュリアンはペロリと舐めてきた。
「あぁ可愛いね、オーブリー。どうしよう、入れたくてたまらないよ。でも、さすがに今日は無理か……」
「当たり前だろ!もう…俺のことは放っておいて早く行けよ」
「……オーブリー?」
「昨日は俺のこと良いようにしたくせに…、今日は王子と楽しそうにして……。早く行きたいんだろう!俺は一人で帰れるから!」
言いながら俺は一人で熱くなっていた。なんだか昨日からジュリアンのことを意識しまくっていたのはもう認める。やけに目について、話せばドキドキして、何をするにも目で追ってしまった。
浴場で手を出されたときも、嫌な気持ちより、俺自身が興奮して触れて欲しいと思ってしまったところもある。
こんな気持ち知らないし、わけが分からないから考えたくなかった。
でも、ジュリアンが王子と仲良くしている光景は目について離れなくて、思い出す度に心臓をチクりと痛めていた。
その痛みは心を鷲掴みにして、そこから汁が溢れてきたように、俺の目からポロポロと涙になって溢れてきた。
「ばか!知らない!あっちに行ってくれ…、ジュリアンなんて…嫌いだ」
「…オーブリー…、もしかして…嫉妬してるの?」
ジュリアンが言った言葉が俺の脳内を突き抜けた。ぽっかり開いた穴に、これほどぴったり嵌まるピースはないというくらい、ぴたっとそれは嵌まった。
自分でも信じられなくて顔に熱が上がってきて、俺は顔を覆って隠した。
「オーブリー、さっきは殿下に入れるなんて言ったけどあれは冗談だよ。すでに殿下の心は決まっているみたいだ、他のやつにね。やっぱり突っ込む方が好きだってさ」
「う…嘘……」
「良かったよ。殿下がオーブリーの魅力に気づく前で。知られてたらさすがに俺でも面倒なことになるからやっかいだった」
顔を隠しながら指の隙間からジュリアンを覗くと、ジュリアンは愛しそうな顔で微笑んでいた。
「言ったでしょう。俺はオーブリーに目をつけてたって……。一目惚れで諦めきれなくて心の奥でずっと思ってた。まさか、こんなところで再会するなんて…、たとえブロンクス伯爵の手先であっても逃したくなかった。バリタチのくせにどこまで来るのか手探りだったけど、記憶喪失が本当なのか、ちゃんとネコになってくれると思わなかったよ」
しかも、俺好みの最高のネコだよと言って、ジュリアンはニヤリと笑った。
「え……それって、つまりジュリアンは俺のこと…好きなの?」
「そうだよ」
ジュリアンは俺が溢した涙をペロペロとなめとった。
「あ…俺、好きとか…よく分かんなくて、ジュリアンと王子が仲良いのとかイライラしたし、でも、ジュリアンが俺のこと好きになってくれたって…俺…、うっ嬉しい……。これって…好きなのかな……」
ジュリアンは目を細めて微笑んだ。
「嬉しいな。俺に惹かれてくれてるんだね。それはきっと好きの始まりだよ」
俺の中に芽生えた理解不明の感情に名前をつけてもらったみたいだった。でもそのことが、素直に落ちてきて、心の中で破裂してそこからじんわりした熱が広がっていく。
それはお湯の中みたいな心地よい熱だった。
「一緒に帰ろう、オーブリー。歩ける?」
「あ、うん。少しなら…」
ジュリアンに手を引かれて俺は立ち上がった。そして、手を繋いだままイベント会場まで戻っていく。このまま会場に戻ったら二人の関係は一目瞭然だろう。離そうとしたけど、ジュリアンはずっと握ってきて離してくれなかった。
それが嬉しく思えて、今さらとくとくと心臓がリズムよく鳴り出した。恥ずかしくなった俺はずっと下を向いていた。
ん?これって……、俺が主人公とくっついたってこと?
え?ゲームなんて知るかよって思ってたけど、そんなの……ありなの?
「オーブリー、今日も一緒にお風呂に入ろうね」
一人で考えていたら、ジュリアンの言葉で俺は顔を上げた。
ジュリアンは耳元で、つらいでしょう、俺が洗ってあげるからと言ってきた。
その甘い誘いにくらくらしながら、俺は赤くなった顔のままで頷いたのだった。
□□
婚約者選びのイベントは異例の早さで終了した。初日にデューク王子は予想二番人気だった男を見初めていたらしく、すでに二人はベッドを同じにする関係になったということで、早々にお開きになった。
俺は父親の希望をまんまと叶えたわけで、とりあえず家が借金だらけの貧困に陥ることがなくなって一安心した。
そして俺は完全にゲームをぶち壊して、主人公をいただいてしまったらしい……。
コーネル邸の遊戯室には、ジュバジュバと卑猥な音が鳴り響いている。
「あ……もうだ…め…。イキそう…、イっちゃう」
「だめだよ。さっきもイッたばかりだろう。少しは我慢して」
「あん……、ジュリアン…」
ビリヤード台に仰向けに寝かされた俺は、その状態でジュリアンに貫かれていた。
平日の真っ昼間からこんなことをしているなんて、今までの自分では信じられないことだ。
「あっ……ん、きょ…は、勉強…しに来たのに……」
「ああ…、勉強…ね。これが終わってから、ね」
イベントが終わっても、俺とジュリアンの関係は続いている。今日は卒業試験がヤバイ俺に、ジュリアンが自宅で勉強を教えてくれる予定だった。
午前授業が終わってからだったので、制服姿から着替えずにそのままジュリアンの家に来た。
玄関のホールで俺を迎えたジュリアンは、使用人が見ている前で噛みつくようにキスをしてきて、そのまま近くの遊戯室へ押し込まれ、結果こんなことになっている。
「オーブリーがいけないよ。制服のまま来るなんて……、俺を煽るのが上手いなぁ…」
「はっあ…あん………あっあっ、煽って…なんか…」
「学校では大丈夫?狙われたりしてない?」
蕩けた頭だったが、ギクリとして心臓が冷えた。実を言うと、このところ以前悪友だったやつらから追いかけ回されている。いじめというか、尻を狙われて付きまとわれている。
異世界に来てまで男に追いかけられるという、前世とある意味似たような日常になってしまった。
「………なんで黙るの?……んーやっぱり卒業まで待つのやめようかな。危なっかしくて、学校に通わせられないよ」
「え?待つ……?」
俺の問いには答えずに、ジュリアンは楽しそうに笑って再び抽挿を開始した。
「やん……、ジュリア……ン、もうむりぃ……がま…でき…な……、あっんっ……」
「はぁ……そうだね……、一緒にイこう…オーブリー好きだよ」
「んっ…おっ……俺も……、はぁ……あっ!イっちゃ…ああああっ!!」
ジュリアンにしがみつきながら、俺は自分の腹に白濁を放った。
お尻の奥でジュリアンが達したのを感じて、ぞくぞくと震えるほど感じてしまう。
これが好きな人とすることなのかと、俺はまだ慣れぬ行為だけれど、すべて飲み込まれるような幸福に酔いしれていた。
□□
「けっ……結婚!?」
ジュリアンの部屋で仕切り直して、ベッドに教科書を広げていたら、急にそんなことを言われた。
「ブロンクス伯爵は了承済みだよ。正式に申し込んでるし」
「あのっ…親父、何も聞かずに…」
財産を倍に増やした父親は最近遊び歩いていて、よけいに帰ってこなくなっていた。
「実を言うとあの婚約者選びは、最初から家の順位で俺にほぼ決まっていたんだよ。まぁそれもいいかなって思って参加したら、オーブリーに会ってしまったからさ。あの乗馬の日、殿下に聞かれたから断ったんだ」
「へ!?こっ…断った!?殿下の申し出を??」
「そう、もう好きな人ができたって言ったら、それは良かったねって。殿下は話が通じる人だって聞いてたからさ、その通りだった」
なんて命知らずなことをする人だと、俺は青くなってジュリアンを見つめた。わざわざ参加したくせに断ってくるなんて、ふざけるなと殺されても仕方ない話だ。
「だから、命をかけてオーブリーを選んだわけだよ。断られたら悲しいな」
そんな事を言っているが、ちゃんと外堀を埋めて俺の逃げ道をなくしている辺りがジュリアンらしい。それでも、俺に聞いてくるということは、この変人でも、ちゃんと言葉がないと心配にはなるようだ。
「……あーもう、分かったよ」
「え!?本当!!」
一応、俺がいいと言うか不安があったようで、分かりやすくジュリアンの顔が晴れて明るくなった。案外可愛いところがあると思ってしまった。
「……まだ、好きだって…やっと分かったばっかりで…、結婚って…。頭が全然追い付いていかないけどさ」
「いーんだよ!そんなの!何年考えたって同じだから。一緒にいたい気持ちがあれば、上手くいくものだよ」
なんだか丸め込まれたみたいだけど、ジュリアンが幸せそうな顔をしていると、俺も同じように幸せな気持ちになってきた。
頭でっかちに考えても、案外重要なのはこういうことなのかもしれない。
「じゃあ、結婚のお祝いにさっそく子種を仕込んでおこうか」
「いっ…!まっまたやるの!?」
この世界で男が妊娠するためには、相性の良い相手ととにかく数をこなすことらしい……。
なんともシンプルに出来ているものだった。
「あ……だって、勉強は……?」
「ああ、卒業試験なら問題ないよ。学校の理事は国から委託されて俺がやってるから。うまく通してあげる」
「は!?え!?そっ…そんな聞いてな……」
今知った事実に慌てる俺などお構いなしに押し倒してジュリアンは覆い被さってくる。
背中に並べていた教科書が当たって少し痛かった。
「だいたい、朝方まで仕事していたんだろ!?なんでそんなに体力あるんだよ!」
「……なんだろ。俺、昔から疲れ知らずで、すぐ回復しちゃうんだよね」
さすが主人公に与えられた回復力だ。底無しの絶倫男に俺は製作陣を呪った。
「オーブリー好きだよ。今日は寝かさないから」
「うっ……嘘でしょ!?今からそれ言う!?」
まだ空には太陽が高く昇っている。陽の光に溢れた部屋で、シーツの波に飲まれながら、俺の絶叫は屋敷中に響いたのだった。
□完□
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