憶(おも)いは、夢にのせて。

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憶(おも)いは、夢にのせて。

たんたん 鍵盤をたたく僕の音 〈にこにこ〉 となりに座る先生の音 めろめろ 僕の、心音。 ぎろぎろ あいつが僕を睨む音 めきめき あいつの音が美しくなる音 めらめら 負けないぼくの音 〈あの、あの〉 ある日。真っ赤な先生の音 きらきら 左手の指輪が光る音 がーん ぼくとあいつの濁音 ふらふら あいつの音が聴けなくなった音。 ぼかぼか 僕があいつを殴る音。 ずきずき あいつが涙を流す音 どんどん 僕があいつに誓う音 〈ぎゅっぎゅっ〉 僕とあいつが小指を絡める音 すくすく 僕と僕の指が、音を極めた音 さらさら 月日が流れた音 〈こうこう〉 小さな教室で あいつの子供に和音を教える音
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