4・組紐に祈りを込めて

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 個人差はあれど、歴代の忌み子は大体二十歳から三十歳の間に亡くなっている。セシルは今年十九歳で、記憶に残る限りでは炎の国に嫁ぐ前から体はひどく冷えていた。けれど今は自分でも分かるほどに、紐を編む指先までもが温かい。 「どうして……?」  温かい体は、セシルの中に蓄積された魔力の残量が少ないことを意味している。  手首に刻まれた封印が解けることはないし、魔力を封じられたセシルが氷雪の魔法を扱うこともない。ならば体内に蓄積されていた魔力は、どうやってセシルの外に放出されたのか。  思考に耽るセシルの脳裏に、一瞬だけ何かが映り込んだ気がした。けれどそれと同時に鈍い頭痛が脳を叩き、雷雨の時に感じた気持ちの悪い感覚が首をもたげはじめる。  この先へ踏み込んではいけないと、なぜか本能的にそう悟ったセシルが慌てて思考を停止させた。 「……きっと、メルバジールの気候が体に合っているんだわ」  声に出すことで強調した言葉を、心に強く刻み込む。中断していた組紐の続きを再開させることで、セシルはそれ以上余計なことを考えないように意識を紐に集中させていった。
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