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俺はまるで錆びたロボットのようにギギギ…って鳴りそうな鈍い動きで兄さんを見ると
「母さんが準備したらしい」
と呟いた。
兄さんも顔を赤くして
「みたい……だね…」
って答えて、なんか意識してギクシャクしてしまう。
すると
「お待たせ致しました。秋月様、お部屋へご案内させて頂きます」
そう言われて部屋に案内された。
通された部屋は最上階で、クラウンスイートの部屋に通された。
こじんまりしたスイートルームで、窓の外はオーシャンビュー。
最上階にはスペシャルスイートかクラウンスイートの二部屋しかない。
エレベーターを少し歩いた所にドアがあり、ベルボーイさんが俺と兄さんの荷物を中へ入れると、お辞儀して部屋を後にした。
入り口で靴を脱いですぐの部屋は、正面におしゃれなカーテンが掛けられた海の見える大きな窓がある12畳くらいのダイニング、隣の部屋が20畳のベッドルーム。
部屋はダイニング側にトイレ、ベッドルーム側に浴室があった。
ベッドルームの窓際にガラスの丸テーブルとソファー2脚が置かれていて、小さなスイートルームという感じかな?
部屋を見て歩いた後、テレビを見たり寛いでいてもドキドキしていて落ち着かない。
兄さんが立ち上がる度、心臓が跳ね上がる。
(母さんのバカ!変な緊張しちゃって、落ち着かないよ)
そわそわしていたのが分ったのか
「葵」
って兄さんに声を掛けられて
「ひゃい!」
と返事してしまった。
すると兄さんは小さく溜め息を吐いて
「先に風呂入って寝るな。母さんに何言われたか……は想像着くけど、気にしなくて良いから」
って言われてしまう。
兄さんは俺の頭を撫でて、鞄から着替えを取り出すと寝室のある部屋へと入って行った。
俺は溜め息を吐いて膝を抱える。
(やっぱり…中学生に間違われる俺なんか、兄さんは興味無いのかな?)
って考えて涙が込み上げる。
去年の夏休みの時、花火を見ながらゆっくりと関係を進めようって言われたけど……、自宅はやっぱり父さんと母さんの目があるし、何より1歳半を過ぎた彗と舞衣がいつ階段を上ってくるかも分らない状況でなんて出来ないし……。
「はぁ……」
深い溜め息を吐いた時、兄さんの旅行バッグが少し開いていて、中からあの日に母さんが兄さんに手渡した紙袋が目に入る。
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