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浴室からはシャワーの音が響いているので、兄さんには申し訳ないけどこっそり紙袋を取り出して中身を見て絶句した。
(母さん!なんて物を田中さんに買わせてるんだよ!)
袋の中身に目眩を起こしながら、でも俺は踏ん張った!
(待て!これで逃げたら、母さんの企みが水の泡だ!)
俺は中身を取り出し、寝室の窓側のベッドの枕の下に隠した。
兄さんはいつもドア側のベッドで寝るから、後はどう誘い込むかの問題だ。
俺がダイニングに戻りあれこれ考えていると、兄さんが浴室から出て来て
「葵、次どうぞ」
って声を掛けられた。
「あ…うん。ありがとう」
俺も着替えを持って浴室に入る。
(でも、俺のベッドに兄さんを誘い込む方法はどうしよう)
と考えながら、母さんが兄さんにあれを渡したって事は、俺が抱かれる側って事だよな。…って事は、何か準備が必要なのか?
あれこれ考えながらアワアワしてしまい、『ガン』っと頭を壁にぶつけて
(分らない。決定的に、俺の経験値が低すぎる!!)
そう考えて、取り敢えず覚悟を決めてシャワーから出ると、兄さんが寝室のソファーに座って窓の外を見ていた。
俺が浴室から出たのを確認すると
「葵、ちょっと此処に座って」
って、隣の席を指さされる。
「?」
少し怒ってる感じの兄さんの隣に座ると、空の紙袋と紙袋の中身がテーブルに置かれていた。
(げ!バレてる!!)
小さくなっていると
「母さんから聞いたのか?」
ポツリと言われて、俺は首を横に振る。
「兄さんのバッグから、母さんが渡していた紙袋が見えたから……悪いと思ったけど中身を見ちゃったんだ」
そう呟くと、兄さんの大きな溜め息が…。
「前にも言ったけど、俺達は俺達のペースで進めていこうって話しをしたよな?」
怒る訳でもなく、言い聞かせるように言われて俯く。
「兄さんは……したくないの?俺と」
勇気を出して聞くと
「今はそういう話じゃないだろう?」
って言われてしまう。
「でも…兄さん、眉間にシワが寄ってる。怒ってるんでしょう?それって、俺が中学生みたいだから、まだしたくないって事だよね?」
楽しかった旅行が、段々と気持ちが萎んで悲しくなる。
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