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後はもう、緊張してあまり記憶に無い。
そっとキスをされてベッドに押し倒され、頬から耳へと唇を這わせながら兄さんの左手が俺の左側の胸を撫でる。
くすぐったさに身体をよじると、兄さんの手が止まって
「葵、大丈夫?」
って心配そうに見下ろす。
ドキドキする心臓に、顔を両手で隠して
「心臓が壊れそう」
と答えると、兄さんは小さく微笑んで
「俺もだよ、ほら…」
そう言って、顔を隠していた俺の左手を兄さんの左胸に当てた。
『トクトクトクトク』って早鐘を打つ心臓の音に、俺は微笑んで
「兄さんも緊張しているんだ」
と呟くと、兄さんはそっと俺を抱き締めて
「ずっと大切にしてきた人を抱くからね。緊張するよ」
そう言うと、俺の頬にキスを落とした。
「怖かったり、痛かったら遠慮しないで言うんだよ」
俺を気遣うように囁く兄さんに、胸がぎゅっとする。
「胸が……」
と呟いた俺に、兄さんが心配そうな顔になり
「胸?痛い?俺、触り方雑だった?」
って慌て始めた。
俺はそんな兄さんに微笑み
「ううん。兄さんが好きすぎてね、胸がぎゅって苦しくなるんだ」
そう呟くと、兄さんはふわりと微笑んで
「俺だってそうだよ。葵の笑顔や葵の言葉に、何度も何度も胸が苦しくなった。これからもきっと、俺が切なくなったり苦しくなったり、幸せになったりするのは葵の事でなんだって思ってる」
と答えた。
俺に触れる兄さんの手の熱さとか、重なり合う肌の温もりが愛おしくて堪らなくなる。
母さんがいつも聞かせてくれた
『大好きな人と触れ合うとね、泣きたくなるくらいに幸せな気持ちになるのよ』
っていう言葉の意味を、今初めて知った気がする。
俺の肌を伝う兄さんの唇も、触れる大きな手も……。
何もかもが愛しくて、心の奥から温かな気持ちになっていく。
「葵、挿入れるよ」
そう言われて、初めて兄さんの熱を身体で受け止めた。
俺の身体で感じている兄さんの表情も、荒い呼吸も、顎を伝う汗も……。
全部全部愛おしくて、挿入された苦しさとかよりも幸せな気持ちになった。
涙が溢れて止まらない俺に、兄さんの大きな両手が俺の頬を包んで涙を拭う。
「ごめん、辛いか?」
って聞かれて、俺は首を横に振った。
「違う……幸せなんだ。此処で兄さんと繋がってるって思うと、幸せで涙が止まらないんだ」
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