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この日の朝食は9時。
二度目は昨夜のお陰でかなり楽だったせいか、俺が乱れに乱れまくってしまい身支度がギリギリになってしまった。
慌ててホテルの朝食バイキングを食べに移動して、トレーとお皿を貰って美味しそうな料理を選んでいた時だった。
行き交う人の波で、思わずすれ違った相手と肩がぶつかってしまう。
「すみません!」
「いえ、こちらこそすみません」
と言い合って、お互いの顔を見て
「蒼ちゃん!」
「あおちゃん!」
ってお互いに叫んでしまった。
「え?なんであおちゃんが此処に?」
目を見開く蒼ちゃんに
「俺達は、母さんから利尻島と礼文島の旅行をプレゼントされたんだよ。蒼ちゃんこそ、どうしたの?」
って聞くと、蒼ちゃんは
「田中さんが有給取れたから、3泊4日で北海道旅行してるんだよ」
そう答えて俺に抱き付いた。
「こんな所でも偶然会えるなんて、運命だね」
と笑顔で言う蒼ちゃんの背後から
「なんでお前が居るんだよ」
って目を据わらせて兄さんが現れた。
すると兄さんの声を聞いて、蒼ちゃんも目を据わらせると
「お前こそ、なんで居るんだよ」
そう言って俺を抱き締めたまま
「あおちゃんに変な事してないだろうな」
と、低い声で呟くと
「そ~う~す~け~さん?何をなさっていらっしゃるんです?」
って、こちらも目を据わらせた田中さんが現れた。
そして蒼ちゃんの首根っこを掴むと
「兄弟水入らずを邪魔しない!」
そう言って、ズルズルと蒼ちゃんを引きずって連れて行く。
そして途中で立ち止まると、顔だけこっちに向けて
「お役に立てたようで、良かったです」
なんて言って、にっこり笑ったのだ!
「な!」
「えっ!」
真っ赤になった俺達を見て
「え?なに?ちょっと、何があったの?」
ジタバタしながら叫ぶ蒼ちゃんをズルズルと引きずり、田中さんは自分達のテーブルに蒼ちゃんを座らせた。
「あいつ……帰ったら覚えてろよ」
兄さんは苦々しい顔でそう呟いて、深い溜め息を吐いた。
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