同級生

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 その日俺は、いつも通り夜の電車に乗ろうとしていた。毎日部活があって、帰りが遅い。同じ部活の友達は別方向に住んでいて、電車に乗るときは一人だ。乗り込むと、電車の座席にぽつんと座っている女の子がいた。髪が背中ぐらいまであって、ブレザーの制服を着ている。ぼんやり窓に映る自分の顔を眺めていた。俺はその子が中学の同級生であることに気がついた。 「ねえ……覚えてる? その、俺のこと」  そう声をかけると、その子は俺を見て、にっこり笑い、 「悠一くん、久しぶりだね」  と言った。 「ここ座っていい?」 「うん」  俺は同級生の向かいに座った。  彼女とは小中学校と同じ学校で、家も近所だ。高校で別になってからは、話す機会がなかった。顔を合わせる機会がなかったからだ。家が近くても、使う電車が同じでも、学校が違うと案外会わない。 「いつもはこの時間に乗ってないよね?」  俺が聞くと、彼女は頷いた。 「もうすぐ文化祭があって。準備してたら遅くなったの」 「A高校だっけ。だけどあの学校私服じゃなかった?」  俺は彼女が着ているブレザーとチェックのスカートを軽く見ながら言った。 「今は制服っぽい服着るのがブームなの」 「そっか」 「悠一くんは、高校でも野球やってるの?」 「うん」 「悠一くんはちっとも変わらないね」  彼女は笑いながら言った。「君はものすごく変わったね」と思ったけど口に出さなかった。
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