中学生編 第1話

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中学生編 第1話

   1  ホイッスルが体育館内に木霊(こだま)してからすぐ、私はバスケットコートの外に出た。今しがたまで自分が参加していた試合の結果なんて何のその、深呼吸をしながら流れてくる汗をひたすら拭う。四月って言ったって、運動すればそれなりに暑い。  持ってきていたタオルを首にかけて渡り廊下に出る。冷水器から頼りなく出てくる水を飲むと、あまりの冷たさに頭がキーンとした。いてててて。  まだまだとめどなく流れてくる汗をタオルで拭くと、まるでそれが絶対条件だったみたいにぴたっと汗が止まった。ほうっと一息ついて体育館に戻ると、次の試合が始まっていた。危なくない場所に座ってその様子をぼーっと眺める。  四月十日、まだ私が中学生になって間もない日。いわゆる学年レクリエーションで行われているバスケットボール大会は、男の子だろうと私たち女の子だろうと関係なく盛り上がっていた。私もそれなりに楽しんではいたけど、今はそれよりもただ「疲れた」という感想しかない。  もともと運動は得意でも苦手でもなかった――どちらかといえば苦手かもしれない――。昔からインドア派な人間だったのに、さっきは周りの運動が得意な子たちに流されるように激しく動いてしまったのが運の尽き。おかげで足が重い。明日筋肉痛になってやしないかとちょっと心配になる。今日、お風呂でマッサージしよう。  そういえば、結局私たちのチームの勝敗はどうなったんだろう。体育館の真ん中にあったホワイトボードにはトーナメント表みたいな図が書かれていて、私のチームは負けとなっていた。そのことは悔しいけど、正直に言えばこれ以上運動しなくて済むから良かったというのは心の内にしまっておく。  元居た場所に戻ってからまたしばらく、他のチーム同士の試合を何か思うでもなくぼーっと眺める。バスケのルールなんてほとんど知らない。とりあえず二歩までしか歩けないことくらいしか分からない。  私に声を掛けてくる子は誰もいなかった。そもそもインドアに加えてあまり自分から話しかけに行くような人間でもなかったから、誰かと一緒にいるというよりは一人でいることの方が多かった。小学生の時だって、誰かから遊びに誘われたら乗るけれど、自分から誘うなんてことは全くと言って良いほど無かったっけ。それを内気とか暗いとか、もっと悪いと空気が読めないとかって風に言うのは至極簡単だけど、私から言わせてみればその人に合わせようとしないで自分のペースに無理やり付き合わせる方がよっぽど空気が読めないと思う。
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