第2話

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 こんなに気分をエモーショナルにされるとは思わなかった。きっと宇宙飛行士の人たちは、言葉じゃ完璧に言い表すことなんてほとんど不可能に近いような美しさをずっと見ているんだろう。  来て良かったな……。  素直にそう思った。きっと水族館にしたとしても同じだっただろう。  約一時間半のプラネタリウムはあっという間に終わった。ホールを出てからもしばらく現実から離れたような浮遊感に包まれていた。 「はぁ……すごかったな……」  自動販売機の横のベンチに座って一息つく。あの後私たちは、博物館の見れていなかった部分を見てから併設されている小ぢんまりとした公園で一休みしていた。  ずっとプラネタリウムのことばかり話して、気づいた時には外が若干暗くなりだした頃だった。 「そろそろ帰らないとね」 「だね」  来た道を戻ってバスに乗り、一番後ろの五人掛けの席に座った。揺られて帰っている途中、不意に雪ちゃんが「ねえ、咲良?」と朝と同じように頭を預けてきた。 「ん? なに?」 「今日さ、咲良の家泊まってって良いかな?」 「ふぇえ?」  変な声が出た。 「どうしたの急に……」 「別にどうもしてないよ。どうせ明日も休みなんだし、せっかくだからこういうのもしてみたかったんだ」 「でも、雪ちゃんの両親は? 心配しない?」 「大丈夫だよ。昨日のうちに話しておいたから」 「マジか」  本当に「マジか」だ。まさか最初から今日は私の家に泊まるつもりだったなんて。別に私は構わないし、お父さんもそうだろう。雪ちゃん側の両親が良いというなら、断る理由もない。  お父さんに雪ちゃんが泊まりに来る旨をLINEで送ると、すぐに既読が付いて「カレー作り過ぎたからちょうど良かった」との返事が送られてきた。 「咲良、お風呂空いたよ」 「はーい」  先にお風呂に入っていた雪ちゃんがパジャマ姿で私の部屋に入ってきた。体の芯から温まって頬がちょっと赤い雪ちゃんの後に私もお風呂に入る。  雪ちゃんは一回家に戻って準備をしてからここに来た。三人で囲む食卓は慣れないのとちょっとこそばゆいのとで、私もお父さんもなんだかぎこちなかった。だけどその分、一際賑やかで楽しかった。  お風呂から上がって部屋に戻ると、雪ちゃんが足を伸ばして床に座っていた。その隣に座って、私も何となく足を伸ばしてみる。そうしてみると、雪ちゃんとの身長差がかなりあることに気づく。一年生の時は同じくらいだったのに、今じゃ雪ちゃんの方が私より頭一つ分か、それよりちょっと小さいくらい背が高い。
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