高校生編 第3話

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「あれ、雪ちゃん?」 「あ、おはよ咲良」  今日はまだ入学式じゃないはず。私服だからプライベートのお出かけなんだろうけど、こんな早い時間からどこに行くんだろう。  訊くと、雪ちゃんは「高校へのルート下見しておこうと思ってさ」と教えてくれた。 「あぁ、なるほどね」 「そうそう。咲良はこれから?」 「うん」  私が頷くと、雪ちゃんは何故か私を頭のてっぺんから足の爪先までまじまじと見つめてきた。 「え、どうしたの?」 「いや、前に一回写真で見たより何倍も可愛いし似合ってるなぁって」 「そ、そうかな……?」  今から一週間くらい前にお互いの学校の制服を写真に撮って見せ合ったことを思い出す。あの時も雪ちゃんは「可愛いし似合ってる」って褒めてくれたけど、その時もだけどやっぱり直接褒められると照れくさいし恥ずかしい。  と、そこで次の電車が来るアナウンスがホームに鳴った。流れてきた電車に乗って揺られること約十五分。高校の最寄り駅で降りると、そこで雪ちゃんと別れる。  道なりに進んでいくと、次第に私がこれから通うことになる桜台(さくらだい)高校の真っ白な校舎が見えてきた。ちなみに今日は、お父さんはどうしても外せない仕事を任されたらしくて入学式には来れなくなった。ちょっと寂しいけれど、お父さんが会社でそんな仕事を任されるくらい頑張っていると思ったら気にするようなことでもない。  中学校とは全く違う昇降口で靴を履き替えて、掲示板のクラス名簿を見る。全部で五クラスあるうち、私は一年三組だった。その一年生の教室は二階に並んでいる。階段で二階に上がって三組の教室に入る。黒板の座席表を見て、所定の席に座った。窓際で、前から二番目。クラスメイトの中には中学校が同じだった子も何人かいるみたいだから、新学期早々友達出来なくて独りぼっち陰キャルートまっしぐら、なんてことにはならなさそうだ。  入学式前の軽い朝礼みたいな時間までまだ少しあった。春の雲が浮かぶ青い空をボーっと眺めながら、春だなぁなんて思っていると、ぞろぞろと教室に人が集まってきた。みんなちょっと緊張しているような表情をしていた。かくいう私も人並み程度には緊張していて、担任の先生らしき女の人が入ってきた時にはそれがちょっとだけ増した。  その人の指示で講堂へ移動すると、すぐに入学式が始まった。よくある校長の(無駄に)長い式辞、在校生代表の挨拶うんぬんかんぬんを経て教室に戻ってきた後、明日の連絡事項を聞かされて解散となった。  家に帰って、冷蔵庫の中にあるもので軽い昼ご飯を作って食べた後はどこかに行く気にもならずにゆっくりしていた。床に寝転がってスマホをいじっていた。
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