高校生編 第3話

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 夏休みに入ると、雪ちゃんとは図書館で集まって課題を消化することが多くなった。その後は昼ご飯を食べて、デートして、たまにバイトもあって……という案外夏休み前とあまり変わらない毎日を過ごしていた。  そうして七月が終わって八月になった。その第一金曜日。炎天下の中、私は着慣れない浴衣を着て履き慣れない下駄も履いて、プラネタリウムを見に行った時に待ち合わせたのと同じバス停で雪ちゃんを待っていた。これから二度目の夏祭りだ。  行けたらいいねとは言っていたけど、まさかこんなすぐに行くことになるとは思ってもいなかった。この浴衣だって、つい昨日急いでレンタルしたものだ。淡い青色を基調としたアサガオ柄。鏡で見た時にはその何とも言えない感じに苦笑してしまった。髪の長さがマズかったかもしれない。伸ばしておけばよかったな。  小さめの巾着袋に入れていたスマホがピコンっと鳴る。雪ちゃんから「準備終わったから今すぐ向かうね」とのLINEが来ていた。  浴衣を着て夏祭りに行こうって言ったのは私だけど、いざ着てみるとやたら緊張してしまう。雪ちゃんの浴衣はどんなだろう。妙にソワソワして落ち着かない。  暗くしたスマホの画面を鏡代わりにしてあれこれ髪を触る。変じゃないかな、浮いてないかな……。 「さぁーくら!」  突然その声と一緒に誰かに抱きつかれて「うわあぁ」と声が上がる。それからその声がした方を見て、もう一回「うわ」と声が出た。鼻先が触れ合うくらいまで近い距離に雪ちゃんの顔があった。 「あはっ、お待たせ」 「なんだ、雪ちゃんか……」 「逆に誰だと思ったの?」 「分かんない」 「なにそれ。とにかく行こっ」  雪ちゃんに手を取られ、二人でバス停を後にする。今さら雪ちゃんが朱色の浴衣を着ていることに気づく。それに、髪もいつもはストレートなのに今日はウェーブがかかっている上にポニテになっている。どこをどう見ても可愛い。  すぐ隣に雪ちゃんがいたことなんて今までだって何度もあったのに、やたらドキドキしてしまう。 「咲良ってば、ずっと髪触ってたでしょ。どれだけ声かけても気づいてくれないし」 「え、そうだったの?」  全く気付かなかった。 「せっかく浴衣着てきたのに、ちょっと拗ねちゃうぞ?」 「ごめん」  雪ちゃんがむくれたものだから咄嗟に謝ると、すぐに雪ちゃんは無邪気な様子でくしゃっと相好を崩した。 「なぁんて、うっそでーす」 「えぇ~」  なんだろう、雪ちゃんのテンションがいつにも増して高い気がする。前から時々こういうことはあったけど、今回は過去最高レベルだ。夏祭りだからとか浴衣だからとか、そういう理由だろうか。とりあえず可愛い。
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