高校生編 第3話

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「ずるいよ、咲良ばっかり……」  それから、私と目を合わせて言ってくれた。 「私だって咲良のこと、愛してるんだから」 「……うん」  そして私たちは何度もキスをした。周りの目なんて気にしない。どうせみんな花火に夢中なんだから。花火なんてそっちのけで唇を重ね続けた。  何度目かのキスの後、雪ちゃんのもう片方の手が私の頬の上をそっと揺れた。私はその手を取って、右手と同じように指同士を絡め合わせる。それからもう一度唇を食み合うようなキスをする。重なる度、見つめ合う度、背中で花火が打ち上がる度でさえ、雪ちゃんを愛おしく思う気持ちがとめどなく溢れ出てくる。  雪ちゃんの真正面に自分の体を向かせて、その胸元に耳を澄ませる。とくんとくんと確かに心臓が動く音が聞こえてきた。 「もう、咲良ってば子供みたい」 「さっき花火見てはしゃいでた子に言われたくないですぅ」 「ふふ、お互い様だね」 「うん、お互い様だ」  ポツポツと花火が打ち上がる音がする。きっとそろそろ花火が終わるんだろう。 「ねぇ、咲良?」  雪ちゃんが私を呼んだ。 「なに?」 「もうすぐ花火、終わっちゃうからさ、最後にもう一回だけ、しよ?」  何を、なんて聞かなくても分かった。衣擦れの音を立てながら雪ちゃんの目と私の目を合わせて、今日最後になるだろうキスをした。  蜂蜜みたいな、どこまでも甘くて(とろ)けてしまいそうなくらい幸せなキスだった。ちょっとだけリンゴの味もした。
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