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「ずるいよ、咲良ばっかり……」
それから、私と目を合わせて言ってくれた。
「私だって咲良のこと、愛してるんだから」
「……うん」
そして私たちは何度もキスをした。周りの目なんて気にしない。どうせみんな花火に夢中なんだから。花火なんてそっちのけで唇を重ね続けた。
何度目かのキスの後、雪ちゃんのもう片方の手が私の頬の上をそっと揺れた。私はその手を取って、右手と同じように指同士を絡め合わせる。それからもう一度唇を食み合うようなキスをする。重なる度、見つめ合う度、背中で花火が打ち上がる度でさえ、雪ちゃんを愛おしく思う気持ちがとめどなく溢れ出てくる。
雪ちゃんの真正面に自分の体を向かせて、その胸元に耳を澄ませる。とくんとくんと確かに心臓が動く音が聞こえてきた。
「もう、咲良ってば子供みたい」
「さっき花火見てはしゃいでた子に言われたくないですぅ」
「ふふ、お互い様だね」
「うん、お互い様だ」
ポツポツと花火が打ち上がる音がする。きっとそろそろ花火が終わるんだろう。
「ねぇ、咲良?」
雪ちゃんが私を呼んだ。
「なに?」
「もうすぐ花火、終わっちゃうからさ、最後にもう一回だけ、しよ?」
何を、なんて聞かなくても分かった。衣擦れの音を立てながら雪ちゃんの目と私の目を合わせて、今日最後になるだろうキスをした。
蜂蜜みたいな、どこまでも甘くて蕩けてしまいそうなくらい幸せなキスだった。ちょっとだけリンゴの味もした。
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