高校生編 第3話

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 家に帰ってすぐにシャワーを浴びた。その日はバイトの疲れとこの猛暑でやられたのとで課題をやる気なんて少しも起きず、晩ご飯を食べた後ですぐ寝てしまった。  残りの夏休みも大方そんな感じで過ぎていき、特にこれといって問題があったわけでもなく平穏に過ぎていった。夏休みが終わった後は、やれ体育祭だやれ文化祭だで忙しくて、十一月にやっと一息付けると思ったら今度は期末テストで……という忙しないにも程がある二学期を過ごす羽目になった。そんなものだから雪ちゃんと会う機会はなかなか訪れてくれなくて、結局クリスマスイブまでまともに会うことがないまま日々が過ぎていった。  正直寂しかったけれど、忙しいのはお互い様だから仕方ないと割り切るようにしてクリスマスイブの日を待った。  そしてその当日。終業式とホームルームだけの学校から帰ってきた私は、午後から出かける準備を始めた。これから待ちに待った雪ちゃんとの久しぶりのデートだ。それが終わったら、二人とも明日から冬休みだってことで雪ちゃんが私の家でお泊りすることになっている。二回目のイベントとはいえ、まだちょっと慣れないから緊張気味だ。  普段からデートだからってそれほど格好に気合を入れる方じゃない。今日も多分に漏れず、せめて風邪を引かないように気を付けた格好にする。ニットのセーターとフレアのロングスカート、その上からコートを一枚着込んで、首回りにはマフラーを巻く。  ちょっと厚着し過ぎたかな? でも後から寒い思いするよりまだ良いか。  靴を履いて外に出ると、思いの外寒かったようで乾燥して冷えた空気が肌をちくりと刺してきた。マフラーをちょっとたくし上げて、もはや待ち合わせ場所のお約束になっているバス停へ歩く。元を辿ればプラネタリウムに行く時が最初に待ち合わせした時だったけど、あれ以降どこかに二人で出かける時は決まってそこで待ち合わせをしている。他にも待ち合わせする場所ならいくらでもあるけれど、今さら変えても違和感しかない気がする。  空は晴れ間があるけれど、比率で言えば雲の方が多い。ひょっとしたらこの後、雨が降ってくるのかもしれない。  バス停に着くと、既に雪ちゃんが来ていた。寒そうに手を擦り合わせてはあっと息を吐きかけているところに「お待たせ、雪ちゃん」と声を掛けると、その仕草のまま目線だけでこちらを見やる。その時の顔がちょっと間の抜けた感じがして可愛かった。
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