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「お父さん、もうサパイバルごっこ、やめたい」
奴を演じていたお父さんがあわてました。
「えっ、なんで? こんなに楽しいのに?」
買い物から帰ってきたお母さんが、部屋が騒がしいことに気づいて、急いで部屋に駆け付けました。
「あなた、何の騒ぎなの? もう、部屋が土まみれじゃない。えっ、もしかして、倒れている人達は、この前、一緒にバーベキューした方々なのかしら、こちらは町内会の方々ですよね。それにこの液体……ただの水じゃない、なんでこんなに水浸しなのよ」
お母さんは倒れている人に怪我がないことを確認して全員を起こしてから、頭を下げました。
「夫がみなさんにご迷惑をおかけして、妻として大変申し訳なく思っております」
お母さんは頭を下げながら夫への怒りで沸騰しそうでした。視線はお父さんが持つナイフに移り、数秒見つめた後、それが偽物だとわかって安堵の息を吐きました。
その様子をお父さんは見逃しませんでした。
「うちの母さん、軍隊経験あり」と呟きながら感心していました。
私はお母さんに話しかけました。
「お母さん、お兄ちゃんに頭押さえつけられた。あと、土や汗まみれでお風呂に入りたい」
お母さんの頭の糸が切れた音がしました。怒号が響き渡ります。
「あんた、なんで、頭を押さえつけたりしたんだ。お兄ちゃんなら守らないといかんやろ!」
お兄ちゃんが泣きながら話します。
「だって、お父さんの台本にそう書いてあったから」
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