笑顔

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 お母さんからお父さんを消滅させるほどの鋭い眼光が飛びました。お父さんがあわてふためきます。そこには既に奴の面影はありません。 「いや、あれは、たぶん、アドリブなんじゃないかな」  お母さんが台本を素早く入手して読みました。  お父さんがしどろもどろになります。 「いやいや、もし仮に、台本に書いてあったとしても、必ずしもやらないといけないというわけではないですよね。演技っていうのは、台本に書いてあるとかないとか、そういうものではなくて、自然に溢れ出るのが一番いいと言いますよね」  お父さんが小さな声で嘆きました。 「ただ、役者の方々がうちの子供二人に簡単にやっつけられるのは想定していませんでした」  お母さん以外はどっと笑っていましたが、お母さんはお父さんより数倍怖い魔物を宿して漆黒の闇を纏い始めていました。
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