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「そうだね。私も鬼じゃないからね。二人を見て可哀想だから、あげると言ったんだよ。その代わり盗みはダメだと」
「でも、彼は盗んでないと言った、ということですね。貴方達は、この街の子?」
アイリーンは少年と少女を見た。衣服は汚れ、擦り切れて、満足な生活ではないことが想像できる。
このフォグラード王国は豊かではあるが、残念ながら全ての人が満足な暮らしを送れているわけではない。
少ないながらも、彼らのような浮浪児がいるのである。
「俺はニック、こっちは妹のリサ。この街のスラムに住んでる。親はいないよ」
「そう。お食事は出来ているの?」
「あんまり。でも、俺達パンを盗んだりはしてないんだ。信じてよ!」
「貴方の言いたいことは分かったわ。調べてみるわね」
事情聴取を終えた彼女は、周囲の状況を確認していく。
現場となったパン屋は、平民街の飲食区でよくあるタイプの平屋だ。
店先に焼きたてのパンを並べ、店内に入らずとも購入できる仕組みになっている。
アイリーンはざっと周囲を見ると、懐に忍ばせていたビロード生地の包みを取り出した。
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