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「うむ。アイリーン、座りなさい。実はなお前に話があってな……その」
「アイリーン、社交界デビューの日が決まったわ。あなたのお誕生日月である五月、王妃様主催のお茶会に参加しますよ。アナタ、娘が可愛いからと、いつまでもうじうじしないでください」
「す、すまない」
冷たく父を睨む母にも、小さくなった父にも気付かず、アイリーンは告げられた言葉に驚きを隠せなかった。
「え!? い、嫌です。だって私、王太子殿下には興味ありません!」
「こらっ! なんてことを、アイリーン!」
「も、もっとたくさんお嬢様方がいらっしゃいますし、私一人行かなくとも……」
「アイリーン! 社交は貴族の勤めよ!」
「そうだぞ」
「でも……本を読んでる方が楽しいです」
アイリーンはそう言ったきり、俯いてしまう。
見かねた母が、ため息を吐いて口を開いた。
「アイリーン、今度貴方の好きな、【名探偵シャーリーシリーズ】の新作、それも限定版が出るそうね。今回の茶会に出たら、ご褒美として買ってあげましょう」
「!」
アイリーンの耳がピクリと動いた。
そして、ぱっと顔を上げてにっこり笑う。
「お母様! 私、三冊買ってほしいわ。保存用と観賞用が必要なの!」
「全くこの子は……分かりました。その代わりちゃんと茶会に行くのですよ」
「もちろんです!」
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