ファイル1 恋心窃盗事件―怪盗プリンス爆誕―

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 そんな会話をした数か月後——  ()み渡るような青い空。  (きり)の多い国、フォグラードにおいて(めずら)しいほどの晴天だ。  王宮の庭園は、手入れの行き届いた草花が咲き誇り、光を受けてキラキラと(かがや)いている。  綺麗な山吹色(やまぶきいろ)のドレスに身を包んだアイリーンは、初めて見る王宮の庭園に感動していた。 「まあ! なんて美しいのかしら」  思わず感嘆(かんたん)の声を(こぼ)す。 「アイリーン、大人しくしていなさい」 「……分かっています。お父様」  アイリーンはしぶしぶと言った様子で、今にも駆けだそうとしていた体を止めた。  花好きの彼女の目は名残(なごり)()し気に、花壇(かだん)の方を見ていたが、父と母に(にら)まれては大人しくするしかない。  両親の目的は、娘に美しい花々を見せる事ではなく、娘を花として王太子様に()でていただくことなのだから。 (これも限定版三冊のためよ!)  アイリーンは心を強く持ち、花の誘惑(ゆうわく)を振り切る。
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