ファイル1 恋心窃盗事件―怪盗プリンス爆誕―

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 世間の(うわさ)によると王太子は、それは素晴(すば)らしい方だそうで、幼少期から学問、武術共に優秀な成績を収められているそうだ。 「まさに、豊かで広大な国土を持つフォグラードを()べる未来の国王に相応(ふさわ)しい」と近しい者は語る。  またその容姿は、数多(あまた)に星の(きら)めく濃紺の夜空のような美しさと(たた)えられており、流星の光のごとく輝くプラチナブロンドの髪をしているのだとか。  容姿端麗、将来性抜群(ばつぐん)の王太子殿下の婚約者に、娘を召し上げたいと考える貴族はたくさんいる。もちろん令嬢方からの熱望も多い。  しかし、現在十五歳のエドガー様には、浮いた噂の一つもない。  この国の成人は十八歳、結婚適齢期は十六から二十歳。意中(いちゅう)の婚約者がいても良い頃である。  殿下と年の近い高位貴族の令嬢と、その家族を集めた(きさき)選びの場。今年十二歳になったアイリーンも参加することになったのだ。 「はぁ……」  アイリーンの口から思わずため息が零れ落ちる。  テーブルの隙間(すきま)から見える足元の芝が、あまりにも青々と生命力に満ちているので、彼女はここに着いた瞬間(しゅんかん)から芝のベッドで寝ころび、読書したいという衝動(しょうどう)にかられていた。
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